ボルボの3ドアスポーツワゴン「1800ES」は、1971年に発表され、翌1972年に発売が開始されました。「P1800」から発展した2ドアスポーツカー「1800E」をベースに、ボディの後半部分を改装して製造された派生モデルで、当時殆ど前例を見なかったシューティングブレークというカテゴリーが最大の特徴となりました。
グラス式ハッチゲートが特徴のボディ
スタイリングは、ドアより前の部分は1800Eと共通で、フロントマスクも同一のデザインのままであったものの、ドアより後の部分が大きく相違していました。ルーフがテールエンドまで延長され、広大な面積を持つリアクォーターウィンドウが備わると共に、リアには特徴的なグラス式ハッチゲートが設けられました。
乗車定員は1800E同様の2人乗りで、シート後部は専ら広大なラゲッジスペースとなっていました。ボディサイズは全長4,380mm×全幅1,700mm×全高1,280mmで、1800Eと比較すると全長が20mm短縮された他は同一のスペックで、2,450mmのホイールベースも不変でした。車両重量は、ボディ容積の拡大に伴い1800Eよりも30kg増加し、1,160kgとなりました。
ボルボ 1800ESの走行シーン
エンジンは低公害仕様に
サスペンション形式に変更はなく、フロントがダブルウィッシュボーン/コイル式、リアがトレーリングアーム・パナールロッド/コイル式が踏襲されました。ブレーキも、1800E同様の4輪ディスク式でした。エンジンは、基本的に1800Eに搭載されていたものと同一の2L直4OHV D-ジェトロニック燃料噴射仕様ながら、それまでのB20E型から低公害仕様のB20F型に変更されました。
それに伴い、最高出力が5psドロップして125ps/6,000rpmとなると同時に、最高速度も5km/h低下し、185km/hとなりました。トランスミッションは1800Eと同様で、4速MT及び4速MT+電気式オーバードライブの他、ボルグワーナー製の3速トルコン式ATが選択出来ました。駆動方式も変わりなく、FR方式が踏襲されました。
1800ESは、発売年である1972年は1800Eと並行する形で販売されましたが、同年中に1800Eが生産終了となった為、翌1973年に掛けては唯一の1800シリーズの末裔となりました。しかし、同年6月、主要なマーケットである北米の新安全基準をクリアする事が困難となった為生産を終了し、初代P1800から続いた12年に渡る歴史に幕を下ろしました。
1800ESの販売台数は4千台程で、1800シリーズ全体の販売台数が4万7千台余りであった事からすれば、僅か1年余りの販売期間の割には大きい販売比率を占めていました。それだけ、斬新なスタイリングがユーザーから好評であったと言う事が出来ます。しかしながら、発売時には既に基本設計そのものが旧態化していた為、ドライバビリティーなどの面では時代遅れの感は否めませんでした。