ランチアは1989年、1982年にデビューした「プリズマ」の後継モデルとなる「デドラ」をリリースしました。ランチア主導の元で単独車種として設計されたプリズマと異なり、複数の車種のプラットフォームを共有化する「テーポ2/3プロジェクト」の一環として開発され、「フィアット・ティーポ」「フィアット・テムプラ」「アルファロメオ・155」の姉妹車種となりました。
ボディはセダンとワゴンを用意
ボディタイプはプリズマ同様の4ドアセダンに加え、新たに5ドアステーションワゴンが用意されました。スタイリングは、プリズマより若干丸みを帯びた造形になると同時に空力特性が追求され、Cd値0.29を実現していました。又、車格をプリズマよりワンランク上げる方針から、ボディサイズは一回り大きい全長4,340mm(セダン)/4,343mm(ワゴン)×全幅1,705mm×全高1,430mm(セダン)/1,446mm(ワゴン)に拡大されました。
ホイールベースは前記3モデルと同一の2,540mmで、プリズマからは65mm延長されました。車両重量は初期型で1,060~1,230kgで、パワートレインの変更もありプリズマよりも増加しました。サスペンション形式は、フロントはストラット式を踏襲する一方、リアはそれまでのストラット式からトレーリングアーム式に変更されました。又、4輪ディスク式のブレーキはフロントにベンチレーテッド型が採用されました。
駆動方式は当初FFのみの設定で、プリズマに設定のあった4WDは一旦カタログ落ちしました。発売時に用意されたエンジン及びグレードは、1.6L直4SOHCの「1.6i.e」、1.8L直4DOHCの「1.8i.e」、2L直4DOHC NAの「2.0i.e」、同ターボの「2.0ターボ」のガソリン4タイプに、1.9L直4SOHCディーゼルターボの「ターボディーゼル」を加えた全5タイプでした。
最高出力/最大トルクは、それぞれ89ps/13.2kgm、110ps/14.7kgm、120ps/16.8kgm、161ps/27.9kgm、91ps/19kgmでした。トランスミッションは5速MTの他、「2.0i.e」には4速トルコン式ATが設定されました。一方インテリアは、アフリカン・ローズウッドを用いたインパネやアルカンターラ生地のシートなどが採用され、上質に仕上げられていました。
4WDターボ車を追加
そして1991年に、2Lガソリンターボエンジンのアウトプットを最高出力183ps/最大トルク28.5kgmまで高めて搭載する、フルタイム4WDモデルの「インテグラーレ」が追加されました。WRCへの参戦を前提にした成り立ちを持つ弟分の「デルタHFインテグラーレ」とは異なり、あくまでも純粋なロードカーとして設計されていました。
次いで1994年に、2LガソリンNAエンジンが16バルブ化によりアウトプットが最高出力139ps/最大トルク18.4kgmに向上すると共に、グレード名が「2.0 16V」に変更されました。続いて1998年には、1.6L及び1.8Lエンジンも16バルブ仕様となり、最高出力/最大トルクがそれぞれ103ps/14.7kgm、130ps/16.7kgmに向上、グレード名も「1.6 16V」「1.8 16V」に変更されました。
そして1999年に、後継モデル「リブラ」にバトンタッチして生産終了となりました。日本市場には、1991年からセダンの「2.0ie」「2.0ターボ」が導入されました。