マセラティはデ・トマソ傘下にあった1981年12月に、全てが新設計された小型車「ビトゥルボ」を発表しました。高性能なスポーツカーや豪華な大型GTカーを得意としてきた同社としては異例となる、コンパクトなボディを持ち量販が望めるモデルとして開発されました。しかしながら、優れた走行性能をはじめ豪華な内装や充実した装備など、マセラティらしい個性は健在でした。
まずはクーペが登場
ボディタイプは当初ノッチバックの2ドアクーペのみの設定で、エクステリア・デザインは社内スタッフにより手掛けられました。スタイリングは直線基調のシャープな造形が特徴で、ジウジアーロのデザインによるプレミアムセダン「クアトロポルテⅢ」に類似した雰囲気を持っていました。
ボディサイズは全長4,153mm×全幅1,714mm×全高1,305mm、ホイールベースは2514mmで、兄貴分にあたる「キャラミ」と比較すると全高を除き一回り以上コンパクトでホイールベースも短く、車両重量は遥かに軽い1,086kgに抑えられていました。サスペション形式は、フロント:マクファーソンストラット式/リア:セミトレーリングアーム式が採用されました。
エンジンはツインターボ仕様
ブレーキは上級モデル同様4輪ディスク式で、ステアリング形式はラック&ピニオン式でした。駆動方式は他のマセラティ製モデルと同様FRを採用、エンジンはこのモデルの為に開発された軽合金製の2L V6SOHCで、ビトゥルボ=バイターボの車名通り2基のIHI製ターボチャージャーを装備していました。同時に、1シリンダーあたり3つのバルブが備わる独創的な機構を持っていました。
スペックは、ウェーバー製シングルキャブレター装備により最高出力180psを発生、5速MTを介しての最高速度は215km/hに達しました。一方装備面では、当時のこのクラスではまだ珍しかったエアコンやパワーウィンドウ、集中ドアロックが標準装備されるなど、「小さな高級車」と呼ぶに相応しい充実した仕様を誇りました。
4ドアセダンとスパイダーを追加
そして程なくして3速トルコン式ATが追加された後、1983年にインタークーラー装備により最高出力を210psに高め、足回りを強化した高性能版「S」と、排気量を2.5Lに拡大し最高出力を190psとした輸出専用モデル「2.5」が追加されました。更に同年12月、最高出力を200psにアップした2.5Lエンジンを搭載し、インパネのデザインを変更した4ドアセダン版の「425」がバリエーションに加わりました。
次いで翌1984年に、全長を4,045mm、ホイールベースを2,400mmに短縮し、ザガート製のオープンボディを架装した「スパイダー」が登場しました。エンジンはイタリア国内向けが2L、輸出仕様が2.5Lでした。続いて1985年に2ドアクーペがマイナーチェンジを受け、インパネが425と共通のデザインになった他、LSDが装着されました。
同時に、2.5Lインタークーラー付きエンジン(最高出力210ps)を搭載する「ES」が追加されました。追って同年に、4ドアボディに2Lエンジンを搭載するイタリア国内向けモデル「420」及び「420S」が追加されました。更に翌1986年には、全車のエンジンがフューエルインジェクション化され、2Lが185psに、同インタークーラー付きが220psに、インタークーラー付きのみとなった2.5Lが200psにと、それぞれ最高出力が向上しました。
そして1987年にまず425がビッグマイナーチェンジを受け、内外装やパワートレインの変更と共に車名がビトゥルボの冠名を持たない「430」に変更されました。次いでスパイダーが同様のモディファイを受け「スパイダー・ザガート」に、翌1988年に残るクーペにも同じ内容のモディファイが施され「222」及び「422」になりました。