マツダの小型車「サバンナ」は、1971年9月に姉妹車種の「グランドファミリア」と共に発売されました。レシプロエンジン専用車のグランドファミリアに対しサバンナはロータリーエンジン専用車で、キャッチフレーズは「直感、サバンナ」でした。クラス随一の動力性能を備えるモデルとしてレースでも活躍し、「日産・スカイライン2000GT-R」の50連勝を阻止するなど伝説的な速さを誇りました。
ボディバリエーションは3種類
ボディのバリエーションは、まず2ドアクーペと4ドアセダンが発売され、追って1972年1月に5ドアステーションワゴンの「スポーツワゴン」が追加されました。クーペ/セダンの基本的なプロポーションはグランドファミリアと同一ながら、角型ヘッドランプとリアコンビネーションランプ採用のグランドファミリアに対し、丸型のヘッドランプとリアコンビネーションランプが採用されました。
ボディサイズは全長4,065mm×全幅1,595mm×全高1,335~1,375mm、ホイールベースは2,310mmで、全長はグランドファミリア(初期型)よりも70mm長く、車両重量は発売当初の最上級グレード「GSⅡ」で875kgでした。サスペンションは、グランドファミリアと同様の前:マクファーソンストラット式/後:リジッド・リーフ式で、リアショックアブソーバーはバイアスマウントされていました。
マツダ サバンナのCM
10A型エンジンでスタート
当時の小型車には珍しく、全車にフロントディスクブレーキが採用されました。駆動方式はFRで、搭載されたロータリーエンジンは「コスモスポーツ」や「ファミリアプレストロータリー」で実績のあった491cc×2ローターの10A型でした。スペックは最高出力105ps/7,000rpm・最大トルク13.7kgm/3,500rpmで、トランスミッションは当初4速MTのみだったものの、後に3速トルコン式ATが追加されました。
パフォーマンスは、クーペで最高速度180km/h・0-400m加速15.9sというものでした。発売当初のグレード体系は、クーペが下から「スタンダード」「SX」「GS」「GSⅡ」、セダンが「スタンダード」「RX」「GR」の全7グレードで、装備面では「GSⅡ」に8トラックカーステレオやワイドグリップタイヤなどが、「GR」に国産車初のウインドシールドアンテナが採用されました。
1972年のマイナーチェンジで全車12A型エンジンに
そして1972年9月に、「カペラ」に採用されていた573cc×2ローターの12A型ロータリーエンジン(最高出力120ps/6,500rpm・最大トルク16kgm/4,000rpm)と5速MTを搭載し、最高速度190km/h・0-400m加速15.6sの性能を持つクーペの最上級グレード「GT」が追加されました。そして1973年6月にマイナーチェンジを実施し、フロントマスクとリアコンビネーションランプのデザインが変更されました。
同時に、昭和50年排出ガス規制に適合したAP(REAPS)仕様の12A型エンジン搭載車が設定されました。次いで1974年11月には全車のエンジンがAP仕様12A型となり、更に1975年10月のマイナーチェンジで全車昭和51年排出ガス規制適合となりました。そして1978年3月に実質的な後継モデルのスポーツカー「サバンナRX-7」がデビューした事に伴い、生産終了となりました。
サバンナ (1971-1978)の口コミ評価/中古車購入インプレッション
「サバンナ」って言うと、緑色のサバンナRX-7とかを頭に浮かべると思いますが、我々の年代はそれより前の「サバンナ」の時代です。当時の車は排気量が少なくてソレックスやウェーバーでガソリン調節しながら最大限のパワーを引き出そうとしていた時代です。輸出名はRX-3で、RX-3で覚えている人も少なくはないと思います。
日産のスカイラインGT-Rが国内のレースで勝ちまくっていた頃、サバンナも発売してすぐの’71からレースに参戦。スカイラインの牙城を崩しました。スカイラインの連勝記録を50(勝利数は諸説あります)で止めたと言われています。
加速性能は尋常ではなかった
そんな時に登場したのがこのマツダ・サバンナで、エンジンをイジらずにゼロヨンでも好タイムが出せる最高の車でした。唯一手を加えるとしたらマニホールドからの排気くらいのもの。とにかくその加速性能は尋常ではありませんでした。
当時、エンジンはピストンで動くものと考えられていたのに、モーターのようなローターを回転させることでスムーズな加速性を得ることができたものです。初期型はボディも軽く加速性が抜群だったのですが、私が買った後期S124型は高級感のある室内と大きなボディで乗り心地も最高でした。
ロータリーエンジンの特徴は静かなエンジン音だったので、通常の車だと加速時は爆発しそうなくらいの悲鳴音のような感じだったのですが、サバンナは「シュー」っとローターが回転する音が聞こえるだけで、未来感のある乗り心地でした。
ただ、そんなサバンナにも欠点はあって、エンジン部のローターが回転していることで三角の先(アペックスシール)が摩耗してしまう事です。当時はバイクなども不燃してバックファイヤーが鳴っていましたが、ロータリーエンジンのアフターファイヤーは、戦争が起きたくらいの衝撃があります。
交差点前の減速時には「スッ・パーン!」と大きな音
寒い時期、夜間にエンジンをかけるとすぐに走り出す事は出来ません。十分に暖気してからスタートしますが、交差点前の減速時には「スッ・パーン!」と大きな音が出ます。音が鳴ることを知らない人が同乗していると、間違いなく咥えていたタバコを口から落としますし、隣に並んだ車はエンストしていました。
耳元で散弾銃を打たれたような音と車が揺れるほどの衝撃音が鳴り響きます。でもロータリーエンジンを愛する者にとっては、この「スッ・パーン!」が心地よいわけです。今では公道でアフターファイヤーを鳴らす車にお目に掛かる事は無くなりましたが、たまにバイクがパーンっと鳴らしているのを聞くと懐かしさがこみ上げてきます。
当時はお金が無くて、中古車で安く買える車の代表格だったサバンナは随分と楽しませてもらいました。ちなみに当時のガソリンは石油ショックの頃でメチャクチャ高く、しかもサバンナの燃費はリッター4km程度だったので、ガス欠で大きなボディの車を押して帰ってきたことも良い思い出として残っています。
後継モデル:サバンナRX-7