1978年に初代モデルがデビューした日産のコンパクトカー「パルサー」は、1990年8月のフルモデルチェンジにより4代目となり、同時にパルサーの歴史の中で空前絶後といえる高性能モデル「GTI-R」が設定されました。小型軽量な車体にハイパワーなターボエンジンを搭載し、所謂ホットハッチと呼ばれる車種の中でも群を抜いた動力性能を発揮しました。
エアロパーツなどで外観を差別化
ボディタイプは、3ドア/5ドアハッチバックと4ドアセダンがラインナップされたボディバリエーションの中から、最も軽量な3ドアハッチバックが選択されました。スタイリングは、基本的なプロポーションは他のグレードと同一であったものの、フロントスポイラーやボンネットフード上の巨大なエアインテーク、大型リアスポイラーなどにより差別化が図られました。
ボディサイズは全長3,975mm×全幅1,690mm×全高1,400mm、ホイールベースは2,430mmで、他のグレードから全幅が20mmワイド化され、全高は15mm高くなりました。車両重量は、初期型で1,190~1,220kgでした。サスペンション形式は、他のグレードと同様の前:マクファーソンストラット式/後:パラレルリンクストラット式で、駆動方式はフルタイム4WD「ATTESA」が採用されました。
シルビアと同型式のエンジンを搭載
搭載されたエンジンは、「シルビア」などにも搭載された2L直4DOHCインタークーラーターボのSR20DET型で、4連スロットルバルブや専用大径タービンの採用により最高出力230ps/6,400rpm・最大トルク29kgm/4,800rpmのアウトプットを発生しました。リッター当たり115psの出力は当時としてはハイチューンで、最高出力の絶対値も280ps規制のあった当時の国産車の中ではハイレベルなものでした。
トランスミッションは5速MTのみの設定で、ブレーキはフロントがベンチレーテッド型の4輪ディスク式が採用されました。装備面では、FF方式の最上級グレード「GTI」に備わるエアコンやオーディオシステムといった快適装備が省かれるスパルタンな仕様でした。グレード体系は、パワーウインドゥやビスカス式LSDが備わる「GTI-R」が標準グレードでした。
その他、パワーウインドゥを省き軽量化を図ると同時に、機械式LSDやクロスレシオミッションなどを備えるラリー競技用ベースモデル「GTI-Rベース仕様」や、「GTI-Rベース仕様」にバケットシートやロールバーを装備した、より実戦的な「GTI-R NISMO」も販売されました。そして1992年8月にマイナーチェンジを実施しエクステリアを一部変更、同時に車両重量が10kg増加しました。
WRCにおいては、エンジンの冷却能力不足やタイヤのキャパシティー不足から想定したような結果が残せず、早々と実戦から撤退しました。販売は1995年1月に5代目にバトンタッチされるまで継続されたものの、5代目以降はGTI-Rのようなホットバージョンは設定されなかった為、結果的に最初で最後の存在となりました。