BMWは1962年、新型高級ラグジュアリー・クーペ「3200CS」をリリースしました。1956年から1959年にかけて生産されたクーペ/カブリオレ「503」の後継モデルで、カロッツェリア・ベルトーネの手によるスタイリッシュなエクステリア・デザインと、同社の市販乗用車として初めて200km/hの最高速度を達成した高性能がセリングポイントでした。
エンジンは3.2L V8を搭載
ボディタイプは、2+2シーター仕様の2ドア・ピラーレスハードトップクーペのみの設定で、503とは異なりカブリオレは用意されませんでした。スタイリングは、丸型2灯式ヘッドランプや縦長の狭いキドニーグリル、丸みを帯びた流麗なフォルムなど社内デザインによる503クーペのイメージを受け継ぎながらも、よりモダンかつ洗練されたフォルムへと進化を遂げていました。
ボディサイズは全長4,380mm×全幅1,720mm×全高1,460mmで、503クーペから全長が大幅に短縮されました。ホイールベースは2,835mmで、503クーペやそのベースモデルである「2600/3200シリーズ」と共通でした。車両重量は1,500kgで、503クーペと同一した。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは503譲りの水冷3.2L V8OHVゼニス・ツインキャブレター仕様が搭載されました。
アウトプットは最高出力162ps/5,600rpm・最大トルク24.5kgm/3,600rpmで、圧縮比アップやキャブレターの大径化などにより503時代から22ps/2.5kgmの向上を果たしていました。組み合わせられるトランスミッションは、503同様の4速MTながら各ギアのレシオが変更されるとともに、ファイナルレシオが高められていました。
基本メカニズムは503譲り
パフォーマンスは、最高速度は10km/hの向上を果たした一方で、0-100km/h加速は1s遅い14sとなっていました。サスペンション形式は503や2600/3200シリーズと共通で、フロントにダブルウィッシュボーン/横置トーションバー式、リアに3リンク/縦置トーションバー式が採用されました。ステアリング形式も、それらのモデル同様のラック&ピニオン式が踏襲されました。
一方ブレーキは、503の4輪ドラム式に対し、アウトプット向上に対応するためフロントがディスク式にアップグレードされました。また、ホイール&タイヤは5J×15インチホイール+7.00H15Lクロスプライタイヤまたは185HR15ラジアルタイヤの組み合わせで、503の4.5J×16インチホイール+6.00H×16タイヤから小径&ワイド化が図られました。
そして1965年9月、発売から僅か3年で生産終了となりました。実質的な後継モデルとして、同年開催されたフランクフルト・ショーにおいて小型車「1500」シリーズをベースとしたクーペ「2000C/200CS」が発表されました。