かつてイギリスに存在していた自働車メーカー、MGは、1936年にそれまでの「PB」の後継モデルとなる新型スポーツカー「TAミジェット」を発売しました。PBよりもエンジンが強化されており、軽量な車体と相まって十分な動力性能を発揮しました。その後第二次世界大戦の勃発により一時生産が中断されたものの、戦後に再び生産が開始されロングセラーモデルとなりました。
PBからボディを拡大
基本設計はPB譲りで、ボディタイプも同様にオープンボディの2ドア・ロードスターが主力でした。また、ごく僅かながらフィクスドヘッドボディの2ドア・エアラインクーペも制作されました。スタイリングは、基本的にPBのイメージが踏襲されました。ボディサイズは全長3,543mm×全幅1,422mmで、PBよりも一回り大きく、ホイールベースも170mmほど長い2,388mmに設定されました。
車両重量は800kgで、PBから若干増加していました。駆動方式はコンベンショナルなFRを踏襲し、エンジンはPBの水冷1L直4に代わり、水冷1.3L(1,292cc)直4OHVが搭載されました。6.5:1の圧縮比と2基のSUキャブレターにより最高出力50hp/4,500rpmを発生し、3/4速がシンクロ式の4速MTとの組み合わせにより、最高速度127km/h・0-80km/h加速15.4sの性能を発揮しました。
サスペンション形式は、当時として一般的な4輪リジッド・アクスル式が採用されました。その後1938年に、開閉式のソフトトップが備わる2ドア・ドロップヘッドクーペが追加されました。次いで翌1939年にマイナーチェンジが実施され、「TBミジェット」に移行しました。エクステリア面では大きな変更はなかったものの、エンジンが1,250cc(最高出力54hp/5,200rpm)に置換されました。
そして翌1940年に第二次世界大戦の影響により生産中止となり、終戦後の1945年に改良型の「TCミジェット」となって復活を遂げました。基本的な仕様はTBミジェットから大きな変更はなかったものの、ボディタイプはロードスターに一本化されました。また、エンジンには改良が加えられ、最高出力が55hp/5,200rpmに向上していました。
ビッグM/Cにより近代化
次いで1950年にビッグマイナーチェンジが実施され、「TDミジェット」に移行しました。ボディサイズが全長3,683mm×全幅1,490mmに拡大されたほか、タイヤの小径化(19インチ→15インチ)とそれにともなうフェンダーの造形変更、ホイールの変更(スポークタイプ→ディッシュタイプ)、バンパーの標準化などが図られました。
機構面では、フロントサスペンションが独立懸架式に変更されたほか、ステアリングにラック&ピニオン式が採用されました。また、追ってエンジンの最高出力を57.5hp/5,500rpmまで高めて搭載する「TD MkⅡ」が追加されました。次いで1953年にマイナーチェンジが実施され、「TFミジェット」に移行しました。ボディサイズが全長3,734mm×全幅1,518mmまで拡大されたほか、スラントしたフロントグリルが与えられました。
さらに翌1954年には、エンジンが1.5L(最高出力65hp/5,500rpm)に拡大されました。そして1955年、後継モデル「MGA」にバトンタッチして生産終了となりました。