ドイツ(当時は西ドイツ)の自動車メーカーであるアダム・オペル社は、1965年のフランクフルトモーターショーに出展されたショーモデル「グランツリスモ・クーペ」をベースに「オペル・GT」を開発し、1968年に市販が開始されました。実用車がメインであったオペルにとっては初の本格的なGTカーであり、同社のイメージリーダーカーとしての役割を果たしました。
独特なヘッドランプが特徴
ボディ形状はロングノーズ・ショートデッキの2ドアクーペで、同じグループに属する米国GM社のスポーツカー「コルベット」を彷彿とさせる流麗なスタイリングを備えていました。ヘッドランプはリトラクタブルタイプで、一般的な電動ポップアップ式と異なり、レバー操作で左右方向に180度回転してヘッドランプが現れるユニークな方式が採用されました。
乗車定員は2人で、ボディサイズは全長4,113mm×全幅1,580mm×全高1,225mmとコルベットよりは遥かにコンパクトで、同時代の国産GTカー「トヨタ・2000GT」に近いディメンションでした。車両重量は870~970kgで、トヨタ・2000GTよりも150~250kg軽量でした。プラットフォームは、グランツリスモクーペの「レコルト」用から一クラス下の「カデット」用に変更されました。
ホイールベースはカデットよりも延長され2,431mmに設定された他、前後トレッドもワイド化されました。駆動方式はコンベンショナルなFRで、サスペンション形式はフロントがダブルウィッシュボーン/リーフ式、リアがトレーリングアーム・パナールロッド/コイル式でした。グレードは、「1100GT」と「1900GT」の2種類がラインナップされました。
性能は凡庸ながら扱い易いエンジンを搭載
フロントに搭載されるエンジンは、1100GTが1.1L直4OHVツインキャブ仕様で最高出力60ps/5,200rpm・最大トルク8.8kgm/3,800rpm、1900GTが2L直4SOHCシングルキャブ仕様で最高出力89ps/5,100rpm・最大トルク15.2kgm/2,500~3,100rpmのスペックでした。トランスミッションは共に4速MTが標準で、1900GTのみ3速トルコン式ATを選択する事も可能でした。
最高速度及び0-100km/h加速は、1100GTが157km/h・17.7s、1900GTが187km/h・11sで、当時としても凡庸な性能であった反面扱い易い性格を持っていた為、スポーツカーを足代わりとして使用する北米市場では好評でした。販売の主力は外観の印象を裏切らない程度の性能を持つ1900GTで、販売が振るなかった1100GTは1970年に生産終了となりました。
次いで1900GTも、北米の厳格化された安全基準に適合出来ず1973年に生産終了となりました。日本国内にも1900GTのみが輸入され、235万円の価格で販売されました。この価格はトヨタ・2000GTの238万円に迫るもので、現在の金額に換算すると1,500万円を超える程の高価なモデルでした。