トヨタ自動車は1953年9月、小型車規格改正に対応した新型乗用車「トヨペット・スーパー」を発売しました。1947年に同社戦後初の乗用車としてデビューした「SA型乗用車」が先進的な設計を採用していたのに対し、主要な用途である営業車としてのニーズに対応すべく、実用性・耐久性を重んじだ堅実な設計が採用されました。
4輪リジッド式サスペンションを採用
シャシーは、SA型乗用車が先進的な鋼板Y型バックボーンフレームを採用していたのに対し、戦前に設計された「AA型乗用車」などと同様の古典的なラダーフレームが採用されました。また、サスペンションも当時の劣悪な日本の道路事情に考慮し、旧式な機構ながら耐久性に優れた4輪リジッド・アクスル/リーフ式が採用されました。
ボディタイプは、前後ともに前ヒンジ式のドアが備わる4ドアセダンのみの設定でした。エクステリアは、冒険を避けたコンサバティブなデザインながら、ほぼフラッシュサイド・フルワイズの造形を備えていました。また、当時ボディの生産はトヨタ自製ではなく外注により行われており、関東自動車工業製(RHK型)と中日本重工業製(RHN型)の2種類が存在しました。
両者は、フロントグリルの意匠の相違やボディ側面のモールの有無などにより識別が可能でした。ボディ・ディメンションは全長4,280mm×全幅1,590mm×全高1,600mm、ホイールベース2,500mmで、車両総重量(乗員込み)は1,590kgでした。駆動方式はそれまでのトヨタ車同様の、コンベンショナルなFRが踏襲されました。
新開発の1.5Lエンジンを搭載
フロントに搭載されるエンジンは、新開発された水冷1.5L直4OHVのR型(最高出力48ps/4,000rpm・最大トルク10kgm/2,400rpm)が採用されました。このスペックは、それまでの1L直4SVのS型を21ps/4.1kgmも上回るもので、3速MTを介しての最高速度は100km/hに達しました。
その一方で、R型エンジンの供給が需要に追い付かなかったため、供給体制に余裕のあった従来のS型エンジンを搭載したモデルが「トヨペット・カストム」の車名で生産されました。また、ステアリング形式はウォーム・セクター式で、タイヤは6.00-16サイズが装着されました。乗車定員は5名で、水平基調のインパネには角形5眼式メーターが備わるメーターナセルが装着されていました。
そして発売からわずか1年あまり後の1954年12月をもって販売を終了、翌1955年1月に事実上の後継モデル「トヨペット・マスター」が発売されました。その一方で、トヨペット・スーパーの中古車をベースにライトバンやトラックなどに改造されたモデルが販売されました。