あるオーナーがドイツの単身赴任から戻られました。2年半ぶりの再会でした。現地で交通手段にポルシェターボを購入して、日本に持ち帰ったとの事です。一番近いディーラーで修理をするも良くならないので、修理をして欲しいとの依頼でした。
「排気漏れ、オイルの滲み、時々アイドリングが不調」の内容でした。現地のドイツでも、何度か修理するも完全には良くならなかった様です。後日状態の確認を行いました。オイルの滲みは、エンジン全体がオイルで汚れた状態でした。完全な修理をするなら、エンジンを取り外して行う必要がある事を説明しました。
一番問題だったのは
実は排気漏れが大変問題でした。エキゾーストマニフォールドの取り付けボルトが折損状態なのでした。しかも折れた位置がかなり奥の方で折れている様です。両方の修理作業の確実性には、分解修理が必要と説明をしました。オーナーに承認をしていただき、行う事となりました。エンジンを外しオイル漏れと排気漏れの同時進行です。
オイル漏れ、滲みは、セミ・オーバーホール的な作業となりました。エンジン取り外しと分解で丸1日近く時間を要しました。ガスケット関係の交換がメインですが、大切な事は、接着面の状態を確認、または平面仕上げが重要です。批判ではないのですが、どうもドイツのゴム製品は熱に弱く、劣化は硬化をする事が多いのです。
「硬化をする事」でオイルの漏れや滲みが発生し易い傾向がドイツ車全般に多く発生するのです。作業も追加は増えて行きました。ついでの作業です。バルブタイミングの調整、バルブクリアランスの調整、クラッチディスクの交換、吸排気口のカーボン清掃、等の依頼の増加です。やはり排気漏れの折れボルトの取り外しが簡単ではありませんでした。
スタッドボルトのリカバリ
スタッドボルトが3本折れているのですが、3本共に平面より奥で折れた状態でした。ボルトの中心にドリルで穴を開けるのです。最初はとにかく細い1ミリ位から始め、徐々に4ミリ迄に進めるのです。2本はうまく外せたのですが、1本は簡単ではなく、最終的にヘリコイルを使用する作業になってしまいました。
これは「溝のあるコイルを埋め込む作業」です。経験が必要な作業です。エンジンを取り付けた後に状態の確認です。排気漏れ、オイルの滲みは解消です。最後に残りのエンジン不調です。燃料噴射系はKジェトロニック方式でした。故障診断は経験済みです。
修理も無事終わり
まず基本調整の確認です。吸入空気導入のフラップの位置がずれていました。冷間時と温間時と調整を細かく設定し直しです。幾度とテスト走行を行い、再調整も繰り返して、ラフアイドリング(振れ)は解消方向に向いてきました。一度は触れたかった車です。そして実際に乗りたかった車でもあります。オーナーの運転で高速道路走行では感激しました。加速は想像以上で、まるで飛行機のようでした。