ランチアは1979年9月に、「ベータ」の下位モデルとなるコンパクトカー「デルタ」を発表しました。親会社であるフィアットの「リトモ」のプラットフォームやパワートレインを使用しながらも、様々なモディファイを加える事により全く別のモデルに仕上がっていました。デルタは優れたトータルバランスにより販売面で成功を収めると同時に、1980年のヨーロッパ・カーオブザイヤーを受賞しました。
イタルデザインによるボディ
ボディタイプは5ドアハッチバックのみの設定で、デザインはジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインにより手掛けられました。ボディサイズは全長3,895mm×全幅1,620mm×全高1,400mmで、リトモよりもやや小振りである一方、ホイールベースは若干長い2,475mmに設定されていました。車両重量は、初期型で955~975kgでした。
サスペンションは、形式上はリトモと共通の4輪ストラット式ながら、独自のリファインが施されていました。駆動方式はFFで、発売当初用意されたエンジンはリトモ用の1.3L及び1.5L直4SOHCをチューンナップした物でした。最高出力・最大トルクはそれぞれ76ps/10.7kgm、86ps/12.5kgmで、トランスミッションは1.3Lには4速及び5速MTが、1.5Lには5速MT及び3速トルコン式ATが組み合わせられました。
そして1982年10月に、1.1L直4SOHCエンジン(最高出力65ps)搭載車と、1.6L直4DOHCエンジン(最高出力106ps/最大トルク13.9kgm)を搭載する「1600GT」が追加されました。次いで翌1983年には、ターボチャージャー付き1.6Lユニットを搭載する「1600HFターボ」が登場しました。アウトプットは最高出力132ps/最大トルク19.5kgmまで高められ、最高速度195km/hの性能を発揮しました。
高性能モデルを追加
そして1985年に、ベースモデルとは全く別設計のラリー競技用モデル「S4」が発表されました。ターボチャージャーとスーパーチャージャーを装備する1.8L直4DOHCエンジンをミッドに搭載するフルタイム4WD車で、ロードバージョンで最高出力250ps/最大トルク29.7kgmのアウトプットを発生し、最高速度225km/h・0-100km/h加速6sの性能を発揮しました。
一方、ベースモデルは1986年にマイナーチェンジを受け、フィスリフトやインテリアの意匠変更と共に、1.9L直4SOHCディーゼルターボエンジン(最高出力81ps/最大トルク17.5kgm)搭載車の追加や、1.6L車のフューエルインジェクション化が行われました。更に、後の「HFインテグラーレ」の前身となる、高性能バージョン「HF4WDターボ」が登場しました。
エンジンは最高出力167ps/最大トルク29.1kgmを発生する2L直4DOHCターボで、最高速度209km/h、0-100km/h加速7.8sの性能でした。そして1988年に究極のデルタとも言えるデルタHFインテグラーレがデビュー、1993年に2代目デルタが登場した後も、デルタHFインテグラーレのみ1995年まで生産が継続されました。