フェラーリは1964年に、それまでの「250」シリーズに代わるニューモデルとして「275」シリーズをリリースしました。従来の同社製ロードモデルはコンペティションモデルをベースに製造されていたのに対し、275では最初からロードカーとして設計され快適性が大幅に向上しました。同時に、排気量の拡大やサスペンション形式の変更などによるパフォーマンス向上も図られました。
2種類のボディを用意
車体は鋼管プラットフォームとサブフレームからなる基本構造を踏襲しながら、サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーン式による4輪独立懸架に改められました。ボディタイプは、初期においてはフィクスドヘッド・クーペの「GTB」と、カブリオレの「GTS」の2タイプが用意されました。デザインを手掛けたのは、共に「250GTO64」と同様ピニンファリーナでした。
両者では全く異なるデザインが採用され、GTBはロングノーズやカバー付のヘッドランプなど250GTO譲りの流麗なフォルムが備わっていたのに対し、GTSでは大きなフロントグリルや直立したヘッドランプなどによる古典的なフォルムを備えていました。又、両モデル共にロードカーが基本となるモデルに相応しく、前後にバンパーが装備されました。
ボディサイズは、GTBが全長4,325mm×全幅1,725mm×全高1,245mmで、250GTOよりもショート&ワイドなディメンションとなりました。一方GTSは全長がそれよりも25mm長く、全幅は50mm狭いディメンションでした。ホイールベースは共に250GTOと同一の2,400mmで、車両重量はGTBが250GTOと同一の1,100kg、GTSはそれより260kg重い1,360kgでした。
エンジンはモデルチェンジでDOHC化
駆動方式はFRを踏襲しながらも、トランス・アクスル・レイアウトの採用によりハンドリングの改善が図られました。エンジンは、従来から0.3Lアップの3.3L V12SOHCが採用されました。スペックはGTBが最高出力280HP/7,600rpm・最大トルク30kgm/5,000rpm、GTSが最高出力245HP/7,000rpm・最大トルク28kgm/5,000rpmで、共に250GTOよりも控えめな数値になりました。
トランスミッションは、両者共にギアレシオが一新された5速MTが組み合わせられました。その他、ブレーキは4輪ディスク式を踏襲しながら新たにサーボアシストが装備され、ホイールは従来のワイヤースポークタイプに代わり、ディッシュタイプのカンパニョーロ製アロイが採用されました。生産は、GTSが1965年まで、GTBは1967年まで継続されました。
そして1967年にモデルチェンジが実施され、ノーズを275GTBから65mm延長すると共にスタイリングをリファインした「275GTB/4」が登場しました。最大のトピックはエンジンがDOHC化された事で、更に圧縮比のアップやキャブレターをウェーバー3連からウェーバー6連に変更するなどのチューンナップが施され、アウトプットは最高出力300HP/8,000rpm・最大トルク30kgm/6,000rpmとなりました。
しかし、翌1968年に後継モデルの「365GTB/4」が発表された事に伴い、登場から僅か1年で生産終了となりました。