トヨタ・セリカ1600GTのスパルタンなイメージを作り上げる基になったのが、ボンネット下に納まる直列4気筒DOHC1.6Lユニット「2T-G」という形式名で呼ばれるトヨタの傑作エンジンです。しかしこのパワーユニットはもともとレビン/トレノのために用意されたものではありません。
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スペシャリティカーというジャンルを開拓すべく
1972年3月にレビン/トレノが発売されるより一足速く、1970年10月に登場したセリカのトップモデル、1600GTに初めて搭載され世に出てきます。日本ではそれまで存在しなかったスペシャリティカーというジャンルを開拓すべく登場したセリカは、1969年に開催された第16回東京モーターショーに参考出品されたショーモデル「EX-1」を彷彿とさせるエクステリアによって大きな注目を集めました。
パワーユニットのラインナップはパッション・エンジン・シリーズと呼ばれ、T型、2T型、ツインキャブバージョンの2T-B型、そして2T-G型の4種類が用意されていました。このうち1600GTのみに搭載される2T-G型は、その形式名が示すように2T型をベースとしてツインカムヘッドが与えられたパワーユニットです。
そのため2T型エンジンは2T-G型と同じ1588ccの排気量がありますが、8.5:1の圧縮比によって最高出力100ps/6000rpm、最大トルク13.7kg-m/3800rpmを発揮します。またツインキャブ仕様の2T-B型は最高出力105ps/6000rpm、最大トルク14.0kg-m/4200rpmというスペックになります。
初代セリカ1600GTの紹介ビデオ(前編)
初代セリカ1600GTの紹介ビデオ(後編)
この2T型はV型のバルブ配置を持つクロスフロータイプエンジンで半球型の燃焼室形状のため燃焼効率が高いのが特徴です。さらにシリンダー・ブロックが鋳鉄製のディープスカートタイプ、ヘッドとピストンがアルミニウム合金製、クランクシャフトのメインベアリング数を5本にするなど、素性のよさが光るパワーユニットでした。
すなわち2T-G型はそれまでのトヨタのDOHCユニットのように、既存のエンジンを活用して誕生したのではなく、ベースとなった2T型そのものがDOHC化されることを前提に設計が行われていたのです。
2T-G型のスペックを簡単に紐解いてみると、最高出力115ps/6400rpm、最大トルク14.5kg-m/5200rpmという数字は、2T型、2T-B型と比較しても、驚くほどの飛躍は見られません。しかし、これこそがトヨタの意図するところだったのです。
トヨタセリカのCM
限界までそのポテンシャルを引き上げるよりも、日常における使用を考慮し低回転における扱いやすさを高めるとともに、耐久性と信頼性を兼ね備えたDOHCエンジンとして2T-G型は登場したのです。
そしてこの性格付けはDOHCユニットを一部の愛好者のものから、誰にでも気軽に楽しめる実用的かつ高性能なパワーユニットとして、身近な存在とする結果を生み出しました。これはその後、カリーナ1600GT、そしてレビン/トレノに搭載され、当時のDOHCエンジンとしては異例の生産台数を記録したことや、一時生産中止されたものの2T-GEU型として復活したことからも伺えます。
後期モデル:セリカリフトバック