アメリカのカイザー・モーターズ社の手により1955年にアルゼンチンに設立された自動車メーカー「IKA」は、1966年に新型ミディアムセダン「トリノ」を発売しました。後に、ルノーとの提携により社名が「IKAルノー」、更に「ルノー・アルヘンティーナ」に変更されてからも生産が続けられ、モデルライフが16年に及ぶロングセラーカーとなりました。
ピニンファリーナによりリデザイン
設計はカイザー/IKAのオリジナルではなく、当時カイザーが提携を結んでいたAMCの「ランブラー・クラシック」と基本的に共通のプラットフォームに、イタリアのピニンファリーナの手によりリデザインされたボディを架装したモデルでした。ボディタイプは、様々なバリエーションが用意されたランブラー・クラシックとは対称的に、当初は4ドアセダンのみの設定でした。
スタイリングは、直線基調のボディラインはランブラー・クラシック譲りであったものの、丸型2灯式ヘッドランプ採用のシンプルなフロントマスクなど、欧州車的なセンスが付加されていました。ボディサイズは全長4,723mm×全幅1,800mm×全高1,440mmで、ランブラー・クラシックよりも一回り小さく、ホイールベースも120mm程短い2,723mmに設定されていました。
エンジンはカイザー製を採用
駆動方式はFRを踏襲、エンジンはAMC自製を搭載するランブラー・クラシックとは異なり、カイザー製3.8L直6SOHCシングルキャブレター仕様(最高出力142ps/最大トルク27.1kgm)のノックダウン生産版が搭載されました。トランスミッションは4速MTが組み合わせられ、最高速度160km/hの性能でした。
そして翌1967年、新たなバリエーションとしてランブラー・クラシックにも存在しない2ドアクーペが加わりました。エンジンはセダンと同じ3.8Lながら、ウェーバー3連キャブレター装備によりアウトプットが最高出力188ps/最大トルク33kgmまで高められ、最高速度は200km/hに達しました。追って1968年には、3L直6SOHCシングルキャブレター・エンジン搭載車が追加されました。
アウトプットは最高出力122ps/最大トルク21kgmで、同じく4速MTとの組み合わせによる最高速度は、3.8Lシングルキャブレター・エンジン搭載車より10km/h低い150km/hでした。その後1978年に社名がルノー・アルヘンティーナに変更された際、フェイスリフトが実施されると共に全長が若干延長されました。そして1982年をもって生産終了となりました。
トリノはアルゼンチン国内において高い人気を獲得し、国民車として親しまれました。又、ルノー系モデルの中で、唯一ルノーのオリジナル設計ではない車種でした。