1959年にイギリスに設立された小規模な自動車メーカー、マーコス社は、1965年にBMCの大衆車「オースチン・ミニ/モーリス・ミニマイナー」をベースにFRP製の2ドアクーペボディを架装したGTカー、「850GTミニ・マーコス」を発売しました。キットカー形式での販売と同時にコンプリートカーも製造され、生産が打ち切られた1974年までの9年間に700台以上が販売されました。
ミニよりも長く低いフォルム
エクステリア・デザインは、流線形のロングノーズやファストバック&コーダトロンカのリアまわりなど、ミニ/ミニマイナーがベースとは思えないフォルムを備えていました。ボディサイズは全長3,467m×全幅1,435mm×全高991mmで、ミニ/ミニマイナーと比較すると全長が400mmほど延長された一方、全高は約360mmも低められていました。
一方、ホイールベースはミニ/ミニマイナーと同等の2,032mmで、車両重量は70kgほど軽い533kgに抑えられていました。駆動方式は横置きFF方式を踏襲し、エンジンはこれもミニ/ミニマイナー譲りの850cc直4OHVが搭載されました。8.3:1の圧縮比や1基のSUキャブレターなどに変更はなく、スペックもミニ/ミニマイナーと同一の最高出力34ps/5,500rpm・最大トルク6.1kgm/2,900rpmでした。
組み合わせられるトランスミッションも、同様にローギアがノンシンクロの4速MTが採用されました。また、ラバーコーンを用いたフロント:ウィッシュボーン式/リア:トレーリングアーム式のサスペンションや、ロック・トゥ・ロック2 1/3回転のラック&ピニオン式ステアリング、4輪ドラム式のブレーキなどもミニ/ミニマイナー譲りのものでした。
一方、室内はバケットシートを採用した2シーター仕様となるほか、丸型5眼式メーターを採用した専用デザインのインパネや3本スポーク式のステアリングホイールが備わるなど、GTムードにあふれるものでした。一見ミニ/ミニマイナーとの共通点はなかったものの、水平に近い角度のステアリングポストやペダルレイアウトにその名残がうかがえました。
1.3Lエンジン搭載の高性能版が登場
その後1971年に、「ミニクーパーS」用の1,275cc直4OHVエンジンを搭載する高性能版「1300GTミニ・マーコス」がリリースされました。9.75:1の圧縮比と2基のSUキャブレターにより発生する最高出力は850GTを大幅に上回る77ps/6,000rpmで、4速MTを介しての最高速度は209km/hに達しました。
ミニ・マーコスは走行性能のポテンシャルも高く、発売された翌年の1966年に開催されたル・マン24時間耐久レースにおいて15位で完走を果たすなど、数多くのレースで活躍を見せました。