イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティン・ラゴンダは1967年、1965年にリリースした「DB6」の実質的な後継モデルと位置付けられた新型グランツーリスモ「DBS」を発売しました。それまでの同社製モデルのイメージを一新するスタイリングが採用されたほか、全幅の拡大により居住性の向上が図られたことが特徴でした。
パワートレインはDB6譲り
2+2シーター仕様を踏襲するボディのバリエーションは、オープンボディの2ドア・コンバーチブルが廃止され、フィクスドヘッドボディの2ドア・クーペのみとなりました。エクステリアは、丸型2灯式ヘッドランプや独特な意匠のフロントグリルが備わっていたDB6とは大きく異なり、丸型4灯式ヘッドランプや水平基調のフロントグリルを持つモダンなデザインに変貌しました。
ボディサイズは全長4,585mm×全幅1,829mm×全高1,328mmで、DB6から全長と全高が若干縮小された一方、全幅は一気に150mm以上ワイド化されました。また、ホイールベースはDB6より27mm長い2,611mmに設定されたほか、車両重量も若干重い1,588kgとなっていました。サスペンション形式は、フロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:ド・ディオン・アクスル式が踏襲されました。
駆動方式はFRが踏襲され、エンジンもオールアルミ製の4L直6DOHC がキャリオーバーされました。スペックは、SU3連キャブレターが備わる標準モデルが最高出力286ps/5,500rpm・最大トルク39.8gm/3,850rpm、より高い圧縮比とウェーバー3連キャブレターが備わる高性能版「ヴァンテージ」が最高出力330ps/5,750rpm・最大トルク40.1gm/4,500rpmでした。
トランスミッションはDB6同様、ZF製の5速MTとボルグ・ワーナー製の3速トルコン式ATが設定されました。5速MT仕様の最高速度は、標準モデルが227km/h、ヴァンテージが241km/hでした。ブレーキはDB6同様、フロントに292mm径、リアに274mm径のディスクローターが備わる4輪ディスク式が採用されました。
V8エンジン搭載車を追加
一方、タイヤサイズはDB6の6.70-15から大幅にワイド化され、8.15-15(前後とも)が装着されました。また、ラック&ピニオン式を踏襲するステアリングは、ロック・トゥ・ロックがそれまでの3.1回転から 3.3回転へと若干スロー化されました。その後1969年に、新開発された5.3L V8DOHCボッシュ燃料噴射仕様エンジン(※出力は公表されず)を搭載する「DBS V8」が追加されました。
車両重量は1,700kgまで増加したものの、最高速度はDBSヴァンテージよりも20km/h高い261km/hに達しました。そして1972年、DBS V8がマイナーチェンジを受けるとともに、車名が単なる「V8」に変更されました。同時に、直6エンジン搭載モデルは生産終了となりました。