スズキは鈴木自動車工業と名乗っていた1954年、同社初の4輪自動車の開発に着手し、翌1955年9月に市販化に漕ぎ着けました。西ドイツの大衆車「ロイト・LP400」を下敷きに開発されたモデルで、車名は「スズライト」、規格は軽自動車規格でした。国産車として初めてFF方式が採用されたほか、サスペンションには4輪独立懸架式を採用するなど、先進的な機構が特徴でした。
3タイプのボディでスタート
ボディは当時としては先進的なスチール・モノコック構造で、ボディタイプは当初、3ボックス型2ドアの乗用セダン(SS)と、2ボックス型3ドアの商用ライトバン(SL)、および2ドアピックアップトラック(SP)の3タイプがラインナップされました。スタイリングは、丸みを帯びたフォルムや高いベルトライン、小さなガラスエリアなど、ロイド・LP400の特徴を色濃く受け継ぐものでした。
ボディサイズは、全長2,990mm×全幅1,295mm×全高1,400mm(※セダンの数値)という当時の軽自動車規格に準じたもので、ホイールベースは2,000mmに設定されていました。ロイト・LP400との比較では全長が400mm以上短く、全幅・全高はほぼ同等でした。また、車両重量は540kgでした。サスペンション形式は4輪ダブルウィッシュボーン式で、スプリングは当初コイル式が採用されました。
スズキ歴史館でのスズライト開発物語
空冷360ccエンジンを搭載
フロントに搭載されるエンジンは空冷2ストローク360cc直2で、15.1ps/3,800rpmの最高出力を発生しました。この数値は、ロイト・LP400に搭載されていた空冷2ストローク400cc直2と比較すると2psほど上回るものでした。組み合わせられるトランスミッションは3速コラム式MTで、最高速度85km/hの動力性能を発揮しました。
ブレーキは4輪ドラム式で、タイヤは4.00-16という車格の割に大径のものが装着されました(ロイト・LP400は15インチ)。また、ガソリンタンク容量は18Lでした。装備面では、シングルブレードのワイパーやウィンドウウォッシャーが備わっていたほか、このクラスのモデルには珍しくヒーターが標準装備されていました。
スプリングを変更
そして翌11月に、デリバリーバン(SD)が追加されました。次いで1956年7月、劣悪だった当時の日本の路面状況においてコイル式スプリングの耐久性に問題が生じたため、リーフ式スプリングに変更されました。さらに同年11月には、タイヤサイズがワイドかつ小径の4.50-14に変更されました。
一方、販売面ではライトバンをのぞき振るわなかったため、1957年5月にセダン/ピックアップトラック/デリバリーバンが廃止されました。そして1959年7月にフルモデルチェンジが実施され、2代目スズライトTL型に移行しました。