BMWは1988年、1986年に3代目へとフルモデルチェンジされたアッパーミディアムモデル「5シリーズ」をベースとしたハイパフォーマンス版、E34型「M5」をリリースしました。先代E28型から大幅なボディ剛性強化が図られるとともに、エンジンにも手が加えられ、パフォーマンスがさらに向上しました。
エアロパーツ採用で差別化
ボディタイプは当初は4ドアセダンのみの設定で、スタイリングは5シリーズ譲りのノーブルな雰囲気を踏襲しながらも、前後に設けられたエアロパーツや専用デザインのサイドシルなどにより差別化が図られました。また、空力特性の高さは5シリーズ譲りで、Cd値は0.32を実現していました。
ボディサイズは全長4,720mm×全幅1,751mm×全高1,392mmで、先代から全長が100mm、全幅が約50mm拡大されました。5シリーズとの比較では、全高が20mmローダウンされていました。ホイールベースは先代比で100mm長い2,761mmで、車両重量はボディ剛性強化にともない200kg以上増加し、1,670kgとなっていました。
駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは先代に搭載された3.4L直6DOHC24バルブNAをベースに、排気量を3.5Lに拡大するとともに圧縮比アップや可変吸気システム採用などのリファインが施されました。スペックは最高出力315ps/6,900rpm・最大トルク38.7kgm/4,750rpmで、先代から29ps/2kgmの向上を実現していました。
5速MTとの組み合わせによるパフォーマンスは、最高速度が5km/hアップの250km/h(リミッター作動)となり、0-100km/h加速タイムは0.2s短縮され6.3sとなりました。サスペンション形式はフロントがストラット式、リアがセミトレーリングアーム式で、ブレーキは前後ともベンチレーテッド・ディスク式がおごられました。
M/Cで排気量を拡大
また、タイヤはフロントが235/45ZR17、リアが255/40ZR17で、先代からワイド&大径化されるとともに前後異径サイズとなりました。一方ホイールはアルミ製で、マグネシウム合金製の冷却フィンが備わる点が特徴でした。その後、1992年のマイナーチェンジで排気量を3.8Lに拡大、スペックが最高出力340ps/6,900rpm・最大トルク40.8kgm/4,750rpmまで向上しました。
それにともない、0-100km/h加速タイムは5.9sに短縮されました(※最高速度はリミッター作動により不変)。また、電子制御可変ダンパーが採用されたほか、ホイールの意匠も変更されました。さらに、新たなバリエーションとして同じパワートレインを搭載する5ドアステーションワゴン「M5ツーリング」が追加されました。
そして1995年、5シリーズのフルモデルチェンジにともないM5/M5ツーリングともに生産を終了、その3年後の1998年に新型5シリーズをベースとしたE39型M5がリリースされました。E34型M5の日本市場への初上陸は1991年6月で、1993年5月にマイナーチェンジ版に切り替えられました(※M5ツーリングは導入されず)。