1906年に正式に創立されたイギリスの高級車メーカー、ロールス・ロイスは、1929年に「トゥウェンティー(20)」の後継モデルとなる新型乗用車「20/25HP」をリリースしました。デビュー以来7年が経過し、重くなったボディに対し出力不足が目立つようになっていたトゥウェンティーの問題点を解消するため、性能向上が図られていました。
排気量を拡大
発売当初はそれまでと同様、ロールス・ロイス社から供給されるのはシャシーとメカニカル・コンポーネンツのみで、コーチワークはアフターマーケットにゆだねられていました。シャシーはトゥウェンティー用をベースに強化を図ったものが使用され、ボディは従来同様4ドア・リムジンや2ドア・ドロップヘッドクーペなど、さまざまなタイプのものが架装されました。
ボディ・ディメンションは全長4,570mm、ホイールベース3,270mmで、実質的にトゥウェンティーと同等でした。駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、水冷直列6気筒OHV12バルブの仕様を踏襲するガソリンエンジンは、ボアアップにより排気量がトゥウェンティーの3,127ccから3,669ccまで拡大されました。
点火方式は、コイル&バッテリーとマグネトーによる二重方式が採用され、潤滑は圧力供給方式が踏襲されました。また、キャブレターは自社製の2ジェット型が装備されました。最高出力に関しては、ピークパワーの表記は意味をなさないとの同社の方針により、「十分」との表記しか行われませんでした。最高速度は、109km/hでした。
このエンジンに組み合わせられるトランスミッションは、従来同様運転席右側に設けられたチェンジレバーにより操作を行う4速MTでした。サスペンション形式は、従来のロールス・ロイス車と同様の4輪リジッド・リーフ式で、ブレーキもトゥウェンティー同様のメカニカルサーボ付4輪ドラムブレーキが踏襲されました。
自社製ボディを初めて用意
その後翌1930年に、ホイールベースの延長やエンジンの圧縮比アップなどの仕様変更が施されました。次いで1932年にはさらに圧縮比が高められるとともに、ハイリフトカムシャフトの採用やラジエーターの大型化などの改良が加えられました。また、これまでの恒例を覆し、自社で架装を行う標準ボディが用意されたのもこの年のことでした。
この年式の動力性能は、ロールス・ロイス社公式のデータではないものの、最高速度119km/hというテスト結果が残されています。その後も毎年のように機構面での改良が実施され、完成度が高められていきました。そして1936年に後継モデル「25/30HP」に後を譲り、生産終了となりました。