かつてイギリスに存在していた自動車メーカー、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)は、1962年8月にモーリス部門より新型大衆車「モーリス1100」(ADO16)をリリースしました。前作「ミニ」の上級モデルとして位置付けられ、追って同社の各部門から姉妹車種が次々とリリースされました。その優れたトータルバランスにより好評を博し、ベストセラーカーとなりました。
デザインはピニンファリーナが担当
当初は4ドアセダンのみが用意されたボディのエクステリア・デザインは、カロッツェリア・ピニンファリーナに委託されました。スタイリングはごく短いノッチをもつ3ボックス型で、プレーンなフォルムが備わっていました。ボディサイズは全長3,727mm×全幅1,543mm×全高1,346mmで、ホイールベースは相対的に長い2,375mmに設定されていました。
駆動方式はミニと同様の横置きFF方式が踏襲され、エンジンは1.1L直4OHVシングルキャブレター仕様(最高出力48hp)が搭載されました。トランスミッションは4速MTが組み合わせられ、最高速度125km/hの性能を発揮しました。サスペンション形式は、「ハイドラスティック・サスペンション」と呼ばれるラバーと液体を組み合わせたスプリングを持つ前後関連懸架式が採用されました。
ツインキャブ仕様のMG版などを追加
ブレーキは、フロントにディスク式、リアにドラム式が装備されました。そして同年10月に、MG部門より姉妹車種の「MG1100」がリリースされました。モーリス版とはフロントグリルの意匠が異なっていたほか、エンジンはより強力なツインキャブレター仕様(最高出力55hp)が搭載されました。追って翌1963年9月には、オースチン部門より「オースチン1100」がリリースされました。
基本的にはモーリス1100と同一の仕様であったものの、フロントグリルやインパネなどの意匠は異なっていました。さらに翌10月、バンデン・プラス部門よりレザーとウッドを用いた豪華な内装を持つ「バンデン・プラス1100」がリリースされました。次いで1965年9月には、ウーズレー部門よりバンデン・プラス版に迫る内装を持つ「ウーズレー1100」がリリースされました。
ワゴンと2ドアセダンを追加
また、同じ月にライレー部門よりウーズレー1100と共通の内装とツインキャブレター仕様エンジンを持つ「ライレー・ケストレル1100」もリリースされました。さらに翌10月には、オースチン版とモーリス版に4速ATがオプション設定されました。次いで1966年に3ドアステーションワゴンがラインナップに加えられました。
さらに翌1967年には2ドアセダンが追加されたほか、各ブランドに1.3L直4OHVエンジン(シングルキャブレター仕様:最高出力60hp・ツインキャブレター仕様:最高出力70hp)を搭載する「1300」が追加されました。同時にモーリス版とオースチン版にフェイスリフトが実施されるとともに、フロントグリルの意匠が共通化されました。
その後、1969年にまずライレー版が生産終了となりました。次いで1971年にはモーリス版とMG版も生産終了となった一方で、オースチン版には2度目のフェイスリフトが施されました。そして1973年に後継モデル「オースチン・アレグロ」が発売されたことにともない、翌1974年にADO16シリーズは全車姿を消しました。