フェラーリは2002年に創業55周年を記念するモデルとして、創業者の名を冠したプレミアム・スーパースポーツ「エンツォ・フェラーリ」をリリースしました。それまでのどのフェラーリ車とも異なる個性的なスタイリングを纏うと共に、ボディの軽量化や高性能エンジンの搭載、空力特性や走行性能を向上させる為の様々な工夫など、究極のロードカーとなりました。
可変式のフラップとテールウイングを採用
車体構造はCFRP素材を用いたバスタブ型モノコック構造の採用により、軽量化が図られました。又、エンジンがストレスマウントされ振動・騒音の面で問題のあった「F50」と異なり、弾性マウントの採用により快適性が大きく向上した点も特徴でした。ボディのデザインを手がけたのは、従来のフェラーリ車同様ピニンファリーナでした。
スタイリング面での最大の特徴は、ダウンフォース効果を追求した特徴的なノーズ形状で、更にフロント・フロア左右に設けられたフラップとリアに備わるウイングは、速度に応じ自動的に可変する方式が採用されました。ボディサイズは全長4,702mm×全幅2,035mm×全高1,147mmで、F50より一回り大きく、ホイールベースは70mm長い2,650mmに設定されました。
車両重量はF50よりは重かったものの、この種のスーパースポーツとしては十分軽量な1,365kgでした。ミッドシップマウントされるエンジンは、このモデルの為に新開発された6L V12DOHCで、11.2:1の圧縮比から最高出力650HP/7,800rpm・最大トルク67kgm/5,500rpmのアウトプットを発生しました。トランスミッションは、6速セミAT「F1マチック」が組み合わせられました。
世界最速レベルの性能を実現
パフォーマンスは、最高速度がF50を25km/h上回る350km/h、0-100km/h加速は0.05s短縮された3.65sで、ロードカーとして世界最速レベルの1台となりました。サスペンション形式は他のフェラーリモデル同様4輪ダブルウィッシュボーン式で、ブレーキはブレンボ製CCM(カーボン・コンポジット・マテリアル)採用のベンチレーテッド・ディスクが装備されました。
又、任意にオン・オフする事が可能「ASR」と呼ばれるスタビリティコントロールが装備された事も特徴でした。ホイールとタイヤはF50からインチアップされ、フロントに9J×19ホイール+245/35ZR19タイヤ、リアに13.0J×19ホイール+345/35ZR19タイヤが採用されました。そしてインテリアは、CFRP素材が随所に使用された他、ステアリングに様々なファンクション・スイッチが備えられた事が特徴でした。
エンツォ・フェラーリは、2004年に生産終了となるまでに399台が生産され、そのうち33台が日本に正規輸入されました。