フェラーリは1987年7月に、「288GTO」の実質的な後継モデルになると共に、エンツォが思い描いていた「そのままでレースに出場出来る市販車」を具現化するモデルとして開発された新型スーパースポーツ「F40」を発表。同社伝統の古典的なチューブラフレーム構造が踏襲された一方で、ボディ素材にカーボンやCFRPを使用し軽量化が図られ、高性能エンジンの搭載と相まって当時の市販車として世界最高水準の性能を誇りました。
レーシーなスタイリング
ボディタイプは288GTOと同様フィクスドヘッド・クーペで、デザインも同じくピニンファリーナにより手掛けられました。しかし、スタイリングはリアに備わる巨大なウイングやボディ各所に設けられたNACAダクト、リアウィンドウ越しに見えるエンジンなど、よりレーシーなイメージに変貌を遂げていました。ヘッドランプは288GTOのリトラクタブル式が採用されました。
同時に空力特性の改善も図られ、Cd値は288GTOの0.38から0.34に向上していました。ボディサイズは全長4,430mm×全幅1,980mm×全高1,130mmで288GTOから一回り拡大された一方、ホイールベースは同一の2,450mmが維持され、車両重量は60kg軽量化され1,100kgとなっていました。ミッドシップマウントされるエンジンは、288GTO用の2,855cc V8DOHCターボの排気量を若干拡大し2,936ccとした物が搭載されました。
市販車最速の性能
燃料供給装置は、288GTO同様のウェーバー・マレッリIAWシステムが採用されました。同じく7.8:1の圧縮比から発生するアウトプットは、最高出力478HP/7,000rpm・最大トルク58.8kgm/4,000rpmという当時の市販車としてトップレベルのもので、288GTOからは83HP/8.2kgm向上していました。組み合わせられる5速MTは、1~5速の各ギアレシオは288GTOと同一であるものの、ファイナルレシオが大幅に低められていました。
パフォーマンスは最高速度が19km/hアップの324km/h、0-100km/h加速が0.7s短縮された4.1sとなり、特に最高速度は市販車として世界トップの数値でした。その他、基本的なメカニズムは288GTOと同様、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式やラック&ピニオン式のステアリング形式、4輪ベンチレーテッド式ディスクブレーキなどが踏襲されました。
一方ホイール&タイヤサイズは、288GTOがフロント:8.0J×16ホイール+225/50VR16タイヤ/リア:10.0J×16ホイール+255/50VR16タイヤであったのに対し、フロント:8.0J×17ホイール+245/40VR17タイヤ/リア:13.0J×17ホイール+335/35VR17タイヤへとインチアップ及び大幅なワイド&扁平化が図られました。又、ステアリングやブレーキペダルにパワーアシストを持たないスパルタンな仕様でした。
そしてインテリアも、内張りを持たずボディ素材が剥き出しとなっていた他、4点式のシートベルトが採用されるなどレーシーなものでした。F40は1992年に生産終了となるまでに1,311台が生産され、この内59台が日本に輸入されました。