いすゞ自動車の小型乗用車「ベレット」は、1963年6月に発表され、同年11月に販売が開始されました。英国車を国産化した「ヒルマンミンクス」の後継モデルであるとともに、前年にリリースされた中型乗用車「ベレル」の弟分と位置付けられました。オーソドックスなそれらのモデルとは対照的な先進的な設計が行われ、優れたロードホールディングやシャープなハンドリングを持ち味としました。
4輪独立懸架を採用
ボディタイプは、当初は2ドアセダンと4ドアセダンのラインナップで、スタイリングは卵の殻をモチーフとしたオーバルラインが特徴でした。ボディ・ディメンションは全長4,010mm×全幅1,495mm×全高1,390mm、ホイールベース2,350mmで、ヒルマンミンクスよりも一回り小振りなディメンションでした。また、車両重量は915~1,000kgで、ヒルマンミンクスより軽量に抑えられていました。
駆動方式はコンベンショナルなFRを踏襲し、エンジンは当初、1.5L直4OHVガソリン(最高出力68ps)と1.8L直4ディーゼル(最高出力50ps)が用意されました。トランスミッションは、4速MTが組み合わせられました。サスペンション形式は、フロントがダイヤゴナル式スイングアクスル/コイル式、リアがウィッシュボーン/コイル+リーフ式による4輪独立懸架が採用されました。
ステアリング形式は当時の国産車では珍しかったラック&ピニオン式で、ブレーキは4輪ドラム式が採用されました。インテリアは、丸型2眼式メーターが備わるスポーティなデザインが特徴でした。当初のグレード体系は、ベースグレードと上級グレード「デラックス」のラインナップでした。
クーペを追加
その後1964年4月に、1.3L直4OHVエンジン(最高出力58ps)を搭載し、ヘッドランプを丸型4灯式から丸型2灯式に変更した「1300」と、2ドアクーペ型ボディに1.6L直4OHVツインキャブレター仕様エンジン(最高出力88ps)を搭載するスポーティモデル「1600GT」が追加されました。追って1964年9月、1600GTにフェイスリフトが施されるとともに、フロントブレーキがディスク化されました。
同時に2ドアクーペのラインナップ拡充が図られ、セダンと共通の1.5Lエンジンを搭載する「1500クーペ」と、同エンジンのツインキャブレター版(最高出力77ps)を搭載する「1500GT」が追加されました。次いで1966年4月、セダンに角型2灯式ヘッドランプやハイデッキのリアエンド、リーフ・リジッド式リアサスペンションが備わる「タイプB」が設定されました。
続いて1969年9月に、1.6LエンジンがSOHC化されました。次いで1971年10月にマイナーチェンジが実施され、エンジン・ラインナップがセダンは1.6L直4OHV(最高出力84ps)と1.8L直4SOHC(最高出力115ps)に、クーペは1.6L直4DOHC(最高出力120ps)と1.8L直4SOHC(最高出力100ps/115ps)になりました。
そして1973年10月をもって生産終了となりました。
関連:ベレットGT typeR