マセラティは1974年のトリノ・ショーで、1971年に生産終了となった「クアトロポルテ」以来の4ドア・プレミアムセダンとなる「クアトロポルテⅡ」を発表しました。クアトロポルテに対してはスタイリング路線の変更もさることながら、開発当時提携関係にあったシトロエンのグランツーリスモ「SM」のメカニズムが流用された事が大きな変更ポイントとなりました。
デザインはベルトーネが担当
エクステリア・デザインは、クアトロポルテがカロッツェリア・ピエトロ・フルアによるものであったのに対し、クアトロポルテⅡではベルトーネの手に委ねられました。それに伴い、曲線的なボディラインのクアトロポルテとは対照的な、直線基調のシャープなフォルムに変貌しました。ボディサイズは全長5,200mm×全幅1,870mm×全高1,400mmで、クアトロポルテから更に一回り拡大されました。
又、ホイールベースは基本的に共通のプラットフォームを持つシトロエン・SMよりも170mm長い3,070mmで、クアトロポルテからは300mm以上延長されました。こうしたボディ・ディメンションの変更に伴い、車両重量は200kg重い1,900kgに達しました。サスペションはリアの形式が変更され、4輪ダブルウィッシュボーン式となりました。
ハイロドニューマチック・サスペンションを採用
そして足回りの何よりの特徴は、シトロエン独自のメカニズムである、オイルと窒素ガスにより作動する「ハイドロニューマチック・サスペンション」が採用された事でした。又、高圧ポンプにより生み出される油圧がサスペンションのみならず、ブレーキやステアリングのパワーアシストにも利用される点もシトロエン・SMと同様でした。
駆動方式も又シトロエン・SMと同様のFFで、パワートレインは前年に登場したミッドシップ・スポーツカー「マセラティ・メラク」用の3L V6DOHCエンジンと5速MTの組み合わせが採用されました。このエンジンは、4基のウェーバー40DCNFキャブレターと8.7:1の圧縮比から最高出力はメラクより20psアップの210ps/5,500rpm、最大トルクは1.1kgmアップの27kgm/4,000rpmを発生しました。
しかしながら、重い車体に対してはそれでも力不足は否めませんでした。その他の機構面では、ブレーキはクアトロポルテと同様4輪ディスク式を採用し、ステアリング形式はリサーキュレーティング・ボール式からラック&ピニオン式に変更されました。又、ホイール&タイヤは7.0J×15インチホイール+205VR/70VR15タイヤの組み合わせで、ホイールのワイドリム化とタイヤの扁平化が図られていました。
クアトロポルテⅡはマセラティとしては画期的なモデルであったものの、同年6月にシトロエンを傘下に収めたプジョーに意向により提携関係が解消され、経営状態が悪化した事から量産化には至りませんでした。結局、受注生産により1976年までに僅か13台が生産されたに留まりました。