マツダは1992年10月に、オートザム系列店よりミッドシップ方式の2シーター軽スポーツカー「AZ-1」を発売しました。ベースとなったのは、1989年の東京モーターショーに出展された「AZ550 Sports」シリーズ3モデルの内の「TypeA」で、特徴的なガルウイングドアが継承されました。トリッキーな操縦安定性やタイトな居住性などが持ち味で、マニアックかつ乗り手を選ぶモデルでした。
特異なボディ構造を採用
シャシーは特異なスケルトンモノコック構造で、フィクスドヘッドのボディは軽量化の為FRPが多用された他、キャビンにはガラスキャノピーが採用されました。前述のAZ550 Sports TypeAとのスタイリング面での対比においては、軽自動車規格変更に伴うボディサイズ拡大や、ヘッドランプがリトラクタブル式から固定式に変更されるなどの相違点はあったものの、基本的なプロポーションは継承されました。
ボディサイズは全長3,295mm×全幅1,305mm×全高1,150mmで、全長と全幅は当時の軽自動車規格枠いっぱいのサイズであった一方、全高は同じミッドシップ軽スポーツカーの「ホンダ・ビート」」よりも更に低く、歴代の量販軽自動車で最も低いものでした。ホイールベースはビートより若干短い2,235mmで、車両重量はそれより40kg軽い720kgでした。
サスペンション形式は4輪ストラット式が採用され、ステアリング形式はパワーアシストを持たないラック&ピニオン式で、ロック・トゥ・ロック2.2回転というクイックなレシオを持っていました。極端にテールヘビーな前後重量配分に加え、サスペンションのセッティングやこのステアリングレシオなどが相まって、操縦安定性は機敏である反面スタビリティに欠ける傾向がありました。
オートザム AZ-1 新車情報’92
スズキ製ターボエンジンを搭載
エンジンは、提携関係にあるスズキから供給を受けた0.66L直3DOHCインタークーラーターボのF6A型(最高出力64ps/6,500rpm・最大トルク8.7kgm/4,000rpm)で、トランスミッションは5速MTのみが設定されました。このエンジンは、スズキの「カプチーノ」や「アルトワークスRS/R」にも搭載されていたもので、スペックも同一でした。
又、室内スペースは前述のようにミニマムで、バケットシート採用によりドライビングポジションもタイトなものでした。グレード体系はモノグレードで、価格はビートやカプチーノよりも若干高く設定されていました。そして1994年2月に、専用のエアロパーツやボンネット、テールウイングが備わる限定車「マツダスピードバージョン」が発売されました。
更に同年5月には、マツダの自動車工房「M2」の手により専用エアロパーツやボンネット上にフォグランプが備わった限定車「M2-1015」が発売されました。そして翌1995年9月に、総生産台数4,392台をもって生産終了となりました。販売面では、2万台から3万台以上が生産されたビートやカプチーノに遥かに及ばなかったものの、その希少性から生産終了後に中古車市場で、今でも高値で取引されいます。