アウディAGは1995年のフランクフルト・ショーにおいて、個性的なスタイリングを持つ2ドアクーペ型コンセプトモデルを発表、それから3年後の1998年9月に「アウディ・TTクーペ」と名付けられた市販モデルがデビューを飾りました。決して外観だけがセリングポイントという訳ではなく、スポーツクーペとして高い走行性能を持ったモデルでした。
プロトタイプのイメージを踏襲
コンパクトカーの初代「アウディ・A3」と共通のプラットフォームに架装されるボディは、2+2シーター仕様のフィクスドヘッドクーペで、プロトタイプとの比較では新たにリアクォーターウィンドウが設けられるなどの変更はあったものの、弧を描くようなルーフラインや張り出した前後のフェンダーアーチなどの特徴はそのまま受け継がれました。
又、空力特性にも注力されCd値0.32を実現したものの、独特のフォルムにより180km/h以上の高速域での走行安定性に難があった為、急遽リアスポイラーの追加やサスペンションのセッティング変更、横滑り防止装置「ESP」の採用といった対策が取られました。ボディサイズは全長4,041mm×全幅1,764mm×全高1,346mmで、ライバルと目される「ポルシェ・ケイマン」に対し全高を除き一回り小振りでした。
ホイールベースはA3より100mm近く短縮され、ポルシェ・ケイマンとほぼ同等の2,422~2,428mmに設定されました。サスペンション形式は、フロントはA3同様のマクファーソンストラット式が踏襲された一方、リアはトレーリングアーム式からダブルウィッシュボーン式に変更されました。駆動方式は横置きFFがベースで、同社得意のフルタイム4WD「クワトロ・システム」も設定されました。
搭載エンジンは、まず1.8L直4DOHC20Vターボの標準仕様(最高出力180ps/最大トルク22.9kgm)及び高出力仕様(最高出力225ps/最大トルク28.6kgm)の2種類が用意されました。トランスミッションは標準仕様に5速MTが、高出力仕様に6速MTが組み合わせられた他、マニュアルモード付6速トルコン式AT「ティプトロニック」も用意されました。
オープンモデルを追加
当初のグレード体系は、FFの「1.8T」と4WDの「1.8Tクワトロ」の2グレードでした。そして翌1999年、2シーター仕様のソフトトップコンバーチブル「TTロードスター」が追加されました。次いで2002年、1.8Lターボエンジンのデチューン版(最高出力150ps/最大トルク21.4kgm)搭載モデルが追加されました。
更に翌2003年には、3.2L V6DOHC24V NAエンジン(最高出力250ps/最大トルク32.6kgm)に6速MT又は6速DSGを組み合わせて搭載する「3.2V6クワトロ」が追加されました。次いで2005年、1.8Lターボエンジンのアウトプットを最高出力240ps/最大トルク32.6kgmまで高めて搭載する「1.8Tクワトロスポーツ」が追加されました。
そして2006年4月にフルモデルチェンジが実施され、2代目タイプ8Jに移行しました。日本市場における初代TTは、まず1999年10月に高出力仕様エンジン+6速MT搭載のTTクーペ1.8Tクワトロの導入が開始され、翌2000年5月に同一のパワートレインを搭載するTTロードスター1.8Tクワトロが追加されました。
続いて2001年1月、TTクーペに標準仕様エンジン+5速MT搭載のFFモデル1.8Tが追加され、同年9月にはTTロードスター1.8Tクワトロが1.8Tに切り換えられました。次いで2003年9月、TTクーペに3.2Lエンジン+6速DSG搭載の3.2クワトロSラインが追加され、1.8Tクワトロはカタログ落ちしました。同時に、TTロードスター1.8Tのトランスミッションが6速ATに変更されました。
そして2006年7月にTTクーペが、2007年6月にTTロードスターが2代目モデルに切り替えられました。