1906年に正式に創立されたイギリスの高級車メーカー、ロールス・ロイスは、同年11月にそれまでの「30HP」などに代わる新型乗用車「40/50HP」を発表しました。のちに「シルヴァーゴースト」の愛称で呼ばれるようになったこのモデルは、当時としても保守的な設計であったものの優れた品質が高く評価され、4半世紀にわたり生産が継続される同社初期の代表作となりました。
巨大なボディに大排気量エンジンを搭載
ボディタイプは当初、固定式のルーフやサイドウィンドウを持たないオープンボディの「フェートン」が主力であったものの、クローズドボディの「リムジン」や後席のみクローズドタイプの「ランドウレット」も製造されました。ボディ・ディメンションは全長4,572mm×全幅1,422mm、ホイールベース3,404mmと当時としては巨大なもので、車両重量も1,372kgに達しました。
駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、エンジンは新開発された総排気量7,036ccの水冷直列6気筒12バルブ(1気筒あたり2バルブ)のガソリンユニットが搭載されました。このユニットは、従来のロールス・ロイス車が吸気側バルブがオーバーヘッド方式、排気側バルブがサイド方式の「oise」方式であったのに対し、より保守的なサイドバルブ方式を採用していました。
一方、クランクシャフトは量産化されることなく終わった「V8レガリミット」と同様の7ベアリング式が採用されました。3.2:1という低い圧縮比と1基の自社製キャブレターから発生する最高出力は、48hp/1,250rpmでした。トランスミッションは、それまでのロールス・ロイス車同様のフートペダル式OD付き4速MTが踏襲されました。
さまざまな改良を実施
最高速度は、ロールス・ロイス車としてはじめて60mphの壁を超える63mph(101km/h)に達しました。サスペンション形式は従来モデル同様の4輪リジッド・リーフ式が踏襲され、ブレーキも引き続き後輪のみにドラム式が装着されました。その後1909年にトランスミッションが3速MTに変更され、翌1910年には排気量が7,428ccに拡大され最高出力が45hp/1,000rpmとなりました。
次いで1912年、トランスミッションがトップが直結レシオの4速MTに変更され、翌1913年には電気式ヘッドランプがオーダーで装備できるようになりました(※標準はアセチレンランプ)、その後、1919年に電気式ヘッドランプが標準化されると同時に、セルスターターが装備されました。次いで1923年にホイールベースが延長され、翌1924年にはサーボ付き4輪ドラムブレーキが採用されました。
そして1925年、後継モデル「ファントムⅠ」にバトンタッチして生産終了となりました。総生産台数は、それまでのロールス・ロイス車よりも2桁多い6千台以上におよびました。