かつてサーブの自動車部門として存在したサーブ・オートモビルは、1993年に中型乗用車「900」のビッグマイナーチェンジを実施すると同時に、車名を「9-3(ナイン・スリー)」に変更しました。900から千箇所以上におよぶ設定変更が施され、操縦安定性や乗り心地が向上するとともに、安全装備の大幅な強化が図られました。また、同社初のディーゼル車が設定されたことも特徴でした。
衝突安全性が向上
ボディタイプは900時代と同様、3ドア/5ドアハッチバックと2ドアコンバーチブルの3タイプが用意されました。エクステリア・デザインは900のイメージが踏襲されたものの、ドアフレームやAピラーの強化などにより衝突安全性の向上が図られていました。ボディ・ディメンションは全長4,628~4,630mm×全幅1,712mm×全高1,422~1,427mm、ホイールベース2,605mmでした。
900との僅かな相違はあったものの、実質的には同等でした。サスペンション形式は、それまでと同様のフロント:マクファーソンストラット式/リア:トーションビーム式で、駆動方式も横置きFF方式が踏襲されました。エンジンは、2L直4DOHC NAと過給圧が異なる3種類の2L直4DOHCターボ、および2.3L直4DOHCターボのガソリンと、2.2L直4SOHCディーゼルターボが用意されました。
アウトプットは、2L NAが最高出力132ps/最大トルク18kgm、同低圧ターボが最高出力156ps/最大トルク22.3kgm、同中圧ターボが最高出力188ps/最大トルク26.8kgm、同高圧ターボが最高出力203ps/最大トルク28.9kgm、2.3Lターボが最高出力228ps/最大トルク34.9kgm、2.2Lディーゼルターボが最高出力117ps/最大トルク26.5kgmとなっていました。
組み合わせられるトランスミッションは、5速MTまたは4速トルコン式ATでした。また、フロントがベンチレーテッド型となる4輪ディスク・ブレーキやラック&ピニオン式のステアリング形式などは、900から変更はありませんでした。インテリア面では、引き続き夜間にスピードメーターをのぞく各メーターの照明を任意にオン・オフできる「ブラックパネル」が採用されました。
戦闘機の名を持つグレードを設定
グレード体系は、ベースグレードと上級グレード「SE」のほか、スポーティグレードとして3ドアボディに2.3Lガソリンターボエンジン+5速MTを搭載する「ヴィゲン」がラインナップされました。ヴィゲンとはサーブの航空機部門が製造する防空戦闘機の名前で、その名に恥じない最高速度250km/h・0-100km/h加速6.8sのパフォーマンスを誇りました。
その後翌1999年に、SEの上級グレードとしてエアロパーツが備わる「エアロ」が追加されました。そして2002年にフルモデルチェンジが実施され、2代目モデルに移行しました。初代9-3は、日本市場にもデビューした年の6月に上陸を果たしました。5ドアハッチバックが販売の主力であったものの、ヴィゲンやカブリオレの導入も行われました。