英国の自動車メーカーであったSSカーズは、戦時中の生産中止期間を経て1945年に社名をジャガー・カーズに変更、戦前に設計された車種の生産を再開しました。そして3年が経過した1948年10月のロンドン・モーターショーにおいて、戦後初の新規設計モデル2車種を発表しました。そのひとつが、戦前に生産された「SS100」の後継車種となるスポーツカー「XK120ロードスター」でした。
モダンなスタイリング
初期型においてはアルミニウム素材が用いられた2シーターオープンボディのデザインは、SS100同様に創業者ウィリアム・ライオンズにより手掛けられました。そのスタイリングは、SS100よりも遥かに流麗かつモダンなフォルムに変貌を遂げていました。ボディサイズは全長4,270mm×全幅1,550mm×全高1,270mmで、全長がSS100から400mm以上拡大された一方、全幅と全高は縮小されました。
ホイールベースは2,590mmで、SS100から50mm程短縮されました。一方、車両重量は150kg程増加し1,143kgとなりました。サスペンション形式はSS100の4輪半楕円リーフ式から、フロントがダブルウィッシュボーン/トーションバー式による独立懸架に改められました。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは戦前に設計が開始された3.4L 直6DOHCが搭載されました。
最高速度200km/hオーバーの性能
8:1の圧縮比と2基のSUキャブレターにより最高出力162ps/最大トルク26.9kgmのアウトプットを発生、4速MTを介しての動力性能は、最高速度201km/h・0-60mph加速10sという当時として非常に優れたものでした。又、ステアリング形式はSS100がウォーム&ナット式であったのに対し、リサーキュレーティング・ボール式が採用されました。
ブレーキは当時として一般的だった4輪ドラム式で、タイヤはSS100よりもワイドかつ小径な6.00×16サイズが装着されました。XK120ロードスターは、価格に対するパフォーマンスの高さから欧州及びアメリカ市場において予想を遥かに上回るヒット作となった為、241台目以降のロットからボディの素材が量産化に適したスチールに変更されました。
バリエーションを拡大
その後、1951年にフィクスドヘッドクーペの「XK120FHC」が追加されました。ボディのディメンションや車両重量はロードスターと同一で、室内はウールナット仕上げのインパネやレザーの内張り、ヒーターやベンチレーターの装備などによりロードスターとの差別化が図られていました。又、同じ年にエンジンのアウトプットを最高出力183ps/最大トルク28kgmまで高めたSE仕様が設定されました。
更に1953年には、FHCをベースとしたコンバーチブル「DHC」(ドロップヘッドクーペ)が追加されました。こちらは車両重量が1,346kgまで増加した為、最高速度は193km/hに低下しました。そして翌1954年、改良型のXK140に後を譲り生産を終了しました。