マツダの「パークウェイロータリー26」は、世界初のロータリーエンジン搭載マイクロバスとして、1974年に登場しました。1972年に「ライトバス」の後継モデルとして登場した「パークウェイ26」の車体に、エンジンを2Lガソリン及び2.5Lディーゼルに替えて、ロータリーエンジンに置き換えた新グレードとして追加されました。
ボディサイズは、全長6,195mm×全幅1,980mm×全高2,295mmで、車両重量は2,835kg、乗車定員は車名から推測出来る通り26名でした。スタイリングは、アバンギャルドだったライトバスとは異なり、コンサバな方向でまとめられていましたが、他社のマイクロバスにはない軽快な雰囲気は受け継いでおり、ロータリーエンジンのイメージとも合致したものでした。
ロータリーAPエンジン搭載で差別化
搭載されたロータリーエンジンは、同社最大の排気量を持つ13B型で、1.3Lの排気量から最高出力135ps/6,500rpm、最大トルク18.3kgm/4,000rpmの、当時の2Lレシプロエンジン並みのパワーを発生しました。又、このエンジンは低公害型の「AP」(アンチポリューションシステム)仕様で、当時他社のマイクロバスに低公害車は存在しなかった為、差別化の大きなポイントになりました。
トランスミッションは4速MTで、クラッチとの間に「トルクグライド」と称する流体継手が挿入されていました。これは、ロータリーエンジン固有の特性の為、低回転時に生じるカーバッキングという車体の振動を吸収する役割を果たしました。但し、ATに採用されるトルクコンバーターとは異なりステータ(羽根)が無い為、トルク増幅効果はありませんでした。又、MTであるもののPレンジが備わるのが特徴でした。
パークウェイロータリー26の排気音
走行性能や燃費に難があるも、快適性は良好
実際のドラバビリティーは、車両重量1.2t程度の乗用車への搭載を前提に開発された13B型ロータリーエンジンには、その倍以上もあるパークウェイの車体は荷が重く、元々低速トルクが弱かった事もありエンジン回転を高めに維持して走行する必要がありました。又、ロータリーエンジンはエンジンブレーキの効きが弱い為、下り坂ではフットブレーキを多用する必要があるのも問題でした。
そして、元来燃費に問題のあったロータリーエンジンと過大負荷とも言える重い車体との組み合わせだった為、燃費は非常に悪く、その対策として140Lの大容量ガソリンタンクを備えていました。こうした問題点があった一方、レシプロエンジンを搭載したマイクロバスと比較すると振動や騒音が少ないメリットがあり、乗客は快適であったと言われています。
販売は不振。しかし現在はカルト的な人気も
運転手側の観点からすればドライバビリティーが劣る欠点は明らかで、運用する会社側としても燃費が劣り維持費が嵩む欠点があった為、販売は極めて不振で、3年間の生産期間に僅か44台が販売されたに過ぎませんでした。
一方、今日では、世界で唯一ロータリーエンジンを搭載したマイクロバスというユニークさや、生産台数が極めて少ない故の稀少性、現在の観点では個性的に映るスタイリング等に人気があり、一部のヒストリックカーファンの間ではカルトカー的な存在となっています。
ロータリーを搭載したラージセダン
ロータリーを搭載したピックアップトラック