ボルボの2ドアクーペ「P1800」は、1960年に発表され、翌1961年に発売が開始されました。先行して販売されていたセダン/ワゴン型乗用車のシャシーを流用しながらも、本格的スポーツカーとして設計されていました。メカニズムはコンベンショナルなものでしたが、先進的で美しいスタイリングが持ち味でした。
イタリアでデザインされ、英国で生産されたボディ
ボディのデザインを手掛けたのは、イタリアのカロッツェリアに在籍するデザイナーで、ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションと流麗なボディラインを備える、如何にもイタリア的なセンスを感じさせるスタイリングでした。リアクォーターウィンドウが備わるデザインであるもののキャビンは小さく、乗車定員は2人でした。
ボディの生産は、ボルボ社自身に生産能力がなかった為、製造がイギリスの「プレストスチール」に、最終的な組み立てが同じくイギリスの高級GTカーメーカー「ジェンセン」に委託されました。ボディサイズは、全長4,400mm×全幅1,700mm×全高1,280mmというスポーツカーらしく全高が低いディメンションで、車両重量は1,130kgでした。
手堅いシャシー設計、動力性能は一流
シャシーは、1956年に発売されたセダン/ワゴン型乗用車の「P120・アマゾン」のものが流用されましたが、ホイールベースは150mm短縮され、2,450mmに設定されました。サスペンション形式は、フロントがダブルウィッシュボーン/コイル式、リアがトレーリングアーム・パナールロッド/コイル式によるリジッドタイプでした。ブレーキは、フロントがディスク式、リアがドラム式でした。
エンジンは、B18B型と呼ばれる1.8L直4OHVツインキャブレター仕様で、初期型は最高出力97ps/5,800rpm、最大トルク14.3kgm/3,800rpmのスペックでした。トランスミッションは4速MTで、後にオーバードライブ付がオプション設定されました。駆動方式は、P120と同様のFR方式でした。動力性能は最高速度172km/h、0-400m加速18.6sで、当時としては第一級のスペックでした。(※データはcarfolio.com調べ)
改良が続けられロングセラーに
オリジナルのP1800は1963年までの生産でしたが、後に複数回に及ぶエンジン性能の向上やブレーキ性能の強化、フェイスリフトなどを行い、車名を「1800S」から「1800E」へと変えながら、基本設計を変えないまま最終的に1972年まで生産が継続されるロングセラーモデルとなりました。後継モデルは登場せず、ノッチバックのスポーツクーペは最後となりました。
P1800の主要なマーケットは、スポーツカーに対して大きな需要を持つ北米でしたが、日本においてもヤナセによって販売され、一定の台数が出回りました。また、わずかですが北欧自動車でも輸入が行われていました。その美しいスタイリングと比較的メンテナンスが容易である事から、現在も欧州製旧車の愛好家の間では根強い人気があり、中古車市場で目にする機会もあります。