初代「ホンダ・シビック(SB1型)」は、1972年に「ライフ」等の軽自動車と「1300」の間を埋める車種として登場しました。スタイリングは、当時の国産車では軽自動車以外は殆ど前例がなかった2ボックスのデザインを採用し、まずその点だけでも独創的でした。
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全長が極端に短い独特なパッケージング
車体サイズは、全長3,405mm×全幅1,505mm×全高1,325mmというコンパクトなもので、同時期の3ボックスタイプのライバル車と比較すると、全長が極端に短い独特なパッケージングが特徴的でした。大衆車でありながらクラスレスの雰囲気を醸しましたが、一方で自動車に詳しくない人からは、軽自動車と誤解されるケースもありました。
サスペンションは、1300のようなユニークな方式ではなく、オーソドックスで製造コストを抑えられる4輪ストラット型を採用していました。もう一つ画期的だったのは、それまでホンダが得意とした、空冷方式の高回転高出力型のエンジンではなく、水冷方式の最高出力を抑えたエンジンを搭載した事でした。
まず最初に市場に投入されたグレード「STD」「DX」「Hi-DX」は、1.2Lの水冷直4ユニットから発生する最高出力は僅か60馬力に過ぎませんでした。同排気量の「トヨタ・カローラ」や「日産サニー」のベーシックモデルでさえ68馬力の最高出力を発揮したのと比較すると、如何に控えめなスペックであったかが分かります。
発売から程なくして、よりハイスペックなエンジンや装備を持つグレード「GL」が登場しますが、それでさえも最高出力は69馬力に過ぎず、「トヨタ・カローラ1200SL」の80馬力や「日産サニー1200GX」の83馬力と比較すると、大きく劣っていました。
ホンダ シビックのCM
ライバルメーカーを圧倒する最高出力
それは、時代の潮流が高性能の追求から環境やエコロジーに傾きつつあった事を、首脳陣が読んだ結果でしたが、排気量が100cc大きいだけの1300シリーズが、ライバルメーカーを圧倒する95~110馬力の最高出力を発生した事と比べれば、非常に大きな落差がありました。
ホンダから新型大衆車が発売されるという噂が立った際に、それまでの高回転高出力型路線を踏襲した高性能車であると想像したホンダファンからは、驚きと同時に落胆の声も上がりました。
しかしながら、ピーク出力を削った代わりにトルク特性はフラットで扱い易く、車両重量が最も軽いグレードで600kgと同クラスの平均値より100kg以上軽量であった為、実際の走行性能においてライバルに引けを取る事はありませんでした。そして、翌1973年には、独自の排出ガス低減システム「CVCC」を採用した1.5Lモデルを追加します。
日本のみならず欧米でもヒット
当時は、排気ガス規制が始まる前であり、法的に必須でない低公害車を他社に先駆けて発表した事は、大きな話題となりました。こうした独特の成り立ちと先進技術を採用したシビックは、日本のみならず欧米でもヒットしました。
それまでのホンダ製自動車は、同社のバイクが世界的な人気を誇ったのとは対照的に、海外ではマイナーな存在でした。そのホンダが初めて世界進出を果たした自動車が、シビックだったのです。
Honda Collection Hall 収蔵車両走行ビデオ CIVIC RS(1974年)
後継モデル:2代目シビック