ダイハツのスーパートール軽ワゴン「タント」は、2013年9月に6年ぶり2度目となるフルモデルチェンジを実施しました。前回のフルモデルチェンジと同様キープコンセプトを貫いた為、外観の印象に大きな違いはないものの、使い勝手を更に高める為の実利的な改良が加えられました。
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スタイリングは、基本プロポーションは先代のイメージを色濃く受け継ぐもので、引き続き用意される「タント・カスタム」がスポーティなエクステリアとインテリアにより差別化される点も同様でした。しかし、共にフロント廻りの造形が立体的になった他、空力特性を改善する為ディテールに工夫が凝らされるなどの変更が行われました。
後部ドアの変更と燃費の改善がポイント
ボディサイズは、先代と全く同一の全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,750mmが維持された一方、ホイールベースは35mm短縮され2,455mmとなっています。先代に対するボディの仕様面での変更点は、右側後部ドアもスライドドア化され両側スライドドアとなった事でした。車両重量は、ドア変更に伴う重量増加を様々な軽量化対策で補い、先代とほぼ同じ920kg~1,010kgに抑えられました。
エンジンは、先代から受け継いだDVVT搭載DOHC直3 NAのKF-VE型と、DOHC直3インタークーラーターボのKF-DET型で、最高出力と最大トルクも先代から変更はなく、前者が52ps/6.1kgm、後者が64ps/9.4kgmとなっています。しかし、改良により燃費が向上し、JC08モードで先代の23.5km/L~25km/Lに対し、24.6km/L~28km/Lとなっています。
トランスミッションは先代の後期モデル同様全グレードがCVTで、駆動方式にFFとオンデマンド4WDが用意される点も同様となっています。サスペンションは、初代モデルより踏襲される前マクファーソンストラット式/後トーションビーム式(FF)・3リンク(4WD)式となっています。その他、室内空間の拡大などの改良が行われた他、衝突被害軽減ブレーキ「スマートアシスト」装備グレードを先代同様設定しています。
一部改良で安全装備が充実
同年12月に、先代以降NAエンジンのみの設定となっていた標準タイプに、ターボエンジン搭載グレードが追加されました。次いで2015年4月に一部改良を行い、スマートアシストの進化版である「スマートアシストⅡ」が新たに採用されました。これは、従来のレーザーセンサーとソナーセンサーに加え単眼カメラを追加した事で、運転支援性能を向上させたものです。
従来型と比較し作動速度域が広がった他、新たに車線逸脱警報機能や対歩行者衝突警報機能、後退時誤発信防止抑制機能が追加されています。又、全グレードにVSC(横滑り防止装置)とTRC(トラクションコントロール)を装備するなど、安全装備が大幅に充実しています。現行型タントは、先代にも増して販売が好調で、2014年には登録車も含め年間販売台数日本一に輝いています。
ダイハツ タントの歴史
タントのデビューは2003年
ダイハツの軽乗用車「タント」は、2003年11月に初代モデルが発売されました。それまでに販売されていた同社の「ムーヴ」やスズキの「ワゴンR」などのトールワゴンよりも、更に背の高いワゴンボディを特徴としていました。ワンボックスタイプのワゴンと比較すると室内空間の広さでは若干劣ったものの、フロアが低く乗降性が良い事と、乗用車的な乗り味を持つ事がメリットでした。
そうした点が、特に子育て世代の女性ユーザーを中心に支持され、結果的にメーカーが予想していた以上の大ヒットとなりました。後に、それに触発された競合各社から続々とフォロワーが登場し、「スーパートールワゴン」或いは「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる新しいカテゴリーを形成するに至るなど、軽自動車業界に大きな影響を与えました。
エクステリアもインテリアも個性派
初代タントは、全高が当時のムーヴよりも10cm近く高く設定されると共に、大きなグラスエリアと角度の立ったフロントウィンドウ、そして極端に短いボンネットを待つ、斬新なエクステリア・デザインを備えていました。又、ホイールベースと室内長は当時の軽自動車の中では最も長く、室内高の高さと相まって広大な室内空間を実現していました。
そして、インテリアもエクステリア同様ユニークなもので、低いダッシュボードにセンターメーターが組み合わせられ、巨大なフロントウィンドウと相まって、軽自動車の概念を覆す開放感溢れる前席の空間を実現していました。同時に、インパネシフトを採用した事により、前席ウォークスルーを実現していました。
エンジンはムーヴと同一の型式で、同様にNAとターボが用意され、トランスミッションはNAには3速及び4速の、ターボには4速のトルコン式ATが組み合わせられました。又、駆動方式はFFの他にオンデマンド4WDが用意される点も、ムーヴと同様でした。サスペンション形式は、これもムーヴと同様の前ストラット式/後トーションビーム(FF)式・3リンク(4WD)式を採用する手堅い設計となっていました。
派生モデル「カスタム」追加
2005年には、エアロパーツの装備や押し出しの効いた専用フロントマスクにより、スポーティなムードを演出した派生モデル「タント・カスタム」が追加され、男性ユーザー層を取り込む事に成功しました。
2007年にモデルチェンジ。2代目へ
そして、2007年に初のフルモデルチェンジを実施し、キープコンセプトながらも様々な面で進化を果たし、魅力度が一段とアップしました。
全高とホイールベースが拡大され、フロアもフラット化(FFモデル)する事で一段とルーミーな室内空間を実現すると共に、左側後部ドアに「ミラクルオープンドア」と称するピラーレス電動スライドドアを業界で初めて採用しました。又、パワートレインも刷新され、エンジン型式が変わると共に、トランスミッションにCVTが加わり、3速ATは廃止されました。
2013年に3代目へ
2013年に行われた2度目のフルモデルチェンジでは、前回同様キープコンセプトを守り初代~2代目のイメージを踏襲しつつ、右側の後部ドアもスライドドア化するなどの改良で、使い勝手が更に向上しました。又、エンジンの改良に伴う燃費の改善や、衝突被害軽減ブレーキ「スマートアシスト」を全グレードに設定するなど、時代の流れに即した変更が行われました。
タントという車名は、イタリア語の「とても広い」という意味で、正に「名は体を現す」を地で行くような命名となっています。背の高いディメンションにより走行性能は若干犠牲になっているものの、優れたスペースユーティリティーと使い勝手、そしてファニーなスタイリングがユーザーに好評で、発売当初から現在まで、常に販売ランキング上位に名を連ねるベストセラーカーとなっています。