マセラティのスーパーカー「ボーラ」は、それまでFR方式を採用してきた同社として初となるMR(ミッドシップ)方式採用のモデルとして、1971年にデビューを飾りました。2ドア2シーターのクーペながら、フェラーリやランボルギーニのようなスーパースポーツ路線に走らず、独自のグランツーリスモ路線により落ち着いた走行フィールを追求した点に特徴がありました。
ジウジアーロデザインのボディ
ボディのデザインを手掛けたのは、既に販売されていたFRモデル「ギブリ」と同様ジョルジュエット・ジウジアーロで、ロングノーズ・ショートデッキのギブリとは対照的に、如何にもMR車らしいショートノーズ・ロングデッキのプロポーションを持っていました。又、リトラクタブルヘッドランプ採用による低いフロントフードや鋭角に切り落としたようなテールエンド、シルバーのステンレス製ルーフなどがデザイン上の特徴でした。
ボディサイズは全長4,335mm×全幅1,768mm×全高1,134mmで、ギブリよりも一回り小さく、ライバルであった「ランボルギーニ・ミウラ」に近い大きさでした。ホイールベースはギブリよりも長い2,600mmに設定され、車両重量は200kg程重い1,550kgでした。サスペンションは4輪ダブルウィシュボーン式による4輪独立懸架で、ブレーキはシトロエン製の4輪ベンチレーテッドディスクが奢られました。
マセラティ ボーラの走行シーン
ギブリを凌ぐ動力性能を発揮
大きな面積を持つリアガラスの下に搭載されるエンジンは、ギブリと同様の4.7L V8DOHCウェーバー4連キャブレター仕様が採用されました。スペックは最高出力310ps/6,000rpm・最大トルク46.9kgm/4,200rpmで、5速MTとの組み合わせによる動力性能は最高速度270km/h、0-100km/h加速6.8s、0-400m加速14.6sで、車両重量の増加にも関わらずギブリを大きく凌ぐものでした。
性能面では最高出力385psの3.9L V12エンジンを搭載するミウラには及ばなかったものの、グランツーリスモとしては十分過ぎる程の性能でした。そして1973年に、主要なマーケットであった米国市場で排出ガス規制が強化された為、エンジンをそれに対応した4.9Lに置換し、スペックが最高出力300ps/6,000rpm・最大トルク46.9kgm/3,500rpmへと若干ドロップしました。
しかし、1975年に実施されたマイナーチェンジにより、エクステリアの小変更と同時にエンジンを同一排気量のままパワーアップし、最高出力320ps/5,500rpm・最大トルク49kgm/4,000rpmのスペックになりました。それに伴い初期型と比較しても動力性能が向上し、最高速度が10km/hアップの280km/hに、0-400m加速も0.2s短縮され14.4sとなりました。そして1978年に、総生産台数530台をもって生産終了となりました。