三菱自動車の軽スペシャリティカー「ミニカ スキッパー」は、1969年の東京モーターショーでプロトタイプが出展された後、1971年5月に発売が開始されました。1969年に2代目にフルモデルチェンジした軽セダン「ミニカ」をベースに、前年に発売されたスペシャリティカー「コルト ギャラン GTO」のミニチュア版的なエクテリアデザインを持つボディを架装した、こしゃくな雰囲気のモデルでした。
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独創的なスタイリング
ボディ形状はファーストバックの2ドアクーペで、ミニカ同様に直線を基調としたボディラインで構成され、キックアップしたリアクォーターウィンドウや切り落としたようなカットオフテール、後方視界を確保する為にテールランプ上部に設けられたスモークのスクープドウィンドウ、ヘッドランプの内側にフォグランプを装備する丸型4灯式ランプなどがデザイン上の特徴でした。
乗車定員は4人で、フル4シーター軽クーペとしては1970年に発売された「ホンダ・Z」に次ぐものでした。又、テールゲートの替わりに国産車初となるグラスハッチゲートが設けられていました。ボディサイズは全長2,995mm×全幅1,295mm×全高1,275mmで、全長と全幅は当時の軽自動車規格いっぱいのサイズであり、全高はミニカよりも70mm低く、ホイールベースはミニカと同一の2,000mmでした。
最上級グレードは豪華かつ高性能
奇しくもボディサイズとホイールベースは、最大のライバル車であったホンダ・Zと全く同一のスペックでした。車両重量は最上級グレード「GT」の場合で470kgで、サスペンション形式はミニカ同様の前:ストラット式/後:5リンク・リジッド式でした。駆動方式もミニカ同様FRで、フロントに搭載されるエンジンはミニカの上級グレードに採用されていた360cc水冷2サイクル直2の2G10型でした。
仕様の異なる2種類が用意され、「GT」にはゴールドエンジンと呼ばれる最高出力38psのツインキャブ仕様が、「L/L」と「S/L」にはレッドエンジンと呼ばれる最高出力34psのシングルキャブ仕様が搭載されました。トランスミッションは全車4速MTで、動力性能は「GT」の場合で最高速度120km/h、0-400m加速19.8sと謳われていました。ブレーキは、当時の軽自動車として一般的な4輪ドラム式でした。
インテリア面では、全グレードが大型3連メーターを備えるスポーティなデザインのインパネを持つ他、「GT」と「L/L」は木目調仕上げとなりコンソールボックスが備わりました。又、「GT」のみの装備として3本スポークステアリング、砲弾型フェンダーミラー、ラジアルタイヤなどがありました。その他、当時のクーペやハードトップに流行していた装備であるリアウィンドウバイザーがオプション設定されていました。
エンジンを4サイクル化、そして終焉
そして翌1972年10月、エンジンを4サイクル化した「ミニカF4」のデビューと同時に、ミニカスキッパーのエンジンも4サイクルに置換され、車名が「ミニカスキッパーⅣ」に変更されました。搭載されたのはバルカンエンジンと称する水冷SOHC直2の2G21型で、最高出力はツインキャブ仕様が36ps、シングルキャブ仕様が32psとなり、それぞれ2サイクル時代よりも2psパワーダウンしました。
そして1974年7月、排出ガス規制の実施によりツインキャブエンジンの存続が困難となり、シングルキャブ仕様もパワーダウンが必至となった為、高性能クーペとしての存在感を維持出来なくなったミニカスキッパーは生産終了となりました。ミニカスキッパーは、前述の「ホンダ・Z」や「スズキ・フロンテクーペ」、「ダイハツ・フェローMAXハードトップ」と共に360cc軽スペシャリティカーの黄金期を築き上げました。