日産の大衆車「チェリー」は1970年10月、「サニー」の下に位置付けられる車種として発売されました。当初リッターカーとしてスタートしたサニーが、同年1月のフルモデルチェンジにより1.2L化され車格が上がった為、それに代わるエントリーモデルとしての位置付けでした。又、トヨタが販売していた同クラスの「パブリカ」への対抗措置でもありました。
正式発表の前に、ボディのシルエットの映像と共に「こ・え・て・る・く・る・ま・で・す(超えてる車です)」というキャッチフレーズが流れるテレビコマーシャルを盛んに放送し、消費者の期待感を煽る戦略が取られました。又、同車の販売の為に、新規に「日産チェリー店」を立ち上げるなど、並々ならぬ力が入れられました。
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個性的なスタイリングと定評あるエンジンの組み合わせ
正式発表で全容が明らかとなったチェリーは、当時大衆車として一般的だった、2ドア/4ドアの3ボックスセダンのボディ形状でした。しかし、スタイリングは個性的で、切れ上がったデザインのリアクォーターウィンドウと山型の太いCピラー、それに続くセミファーストバックのリアウィンドウを持ち、見る者に良くも悪くも強い印象を与えました。
ボディサイズは、全長3,610mm×全幅1,470mm×全高1,380mmで、サニーよりも一回り小さく、ライバルのパブリカに近い大きさでした。車両重量は625kg~685kgで、パブリカよりも軽量に抑えられていました。エンジンは、既にサニーに搭載され実績のあった1L OHV直4のA10型が主力で、スポーティグレード「X-1」にのみ、1.2L OHV直4 SUツインキャブ仕様のA12型が搭載されました。最高出力と最大トルクは、前者が58ps/8kgm、後者が80ps/9.8kgmでした。
日産 チェリー X-1(1971) ノスタルジック2デイズ2020
先進的なFF方式と4輪独立懸架を採用
トランスミッションは、3速コラムMTと4速フロアMTが用意されました(X-1は後者のみ)。駆動方式はサニーに採用していたFR方式ではなく、当時の国産車ではまだ少数派だったFF方式が採用されました。又、サスペンションは、フロントがストラット式、リアがトレーリングアーム/コイル式による4輪独立懸架で、リアにリジット/リーフ式サスペンションを採用していたサニーやパブリカよりも先進的なメカニズムでした。
1971年9月には、テールゲートを備える3ドアクーペが追加されました。スタイリングは、「プレーンバック」と称する丸みを帯びた独特なボディ後半部のデザインが特徴で、セダンとは異なる丸目2灯式のテールランプを備えていました。次いで1972年3月に、A12型シングルキャブエンジン(最高出力68ps/最大トルク9.7kgm)搭載を搭載する、1.2Lベーシックグレードが追加されました。
前述したような様々な特徴を備えていたチェリーは、大衆車でありながら野心的な意欲作と言う事が出来ました。しかし、日産の意気込みとは裏腹に、販売は発売当初から今一つ伸び悩み、パブリカの牙城を切り崩す事は出来ませんでした。走行性能や居住性ではパブリカを凌いでいたものの、主力であったセダンの独特なスタイリングが「尻切れトンボ」と称され不評であった事が影響していました。しかし、ヨーロッパでは車としての完成度が評価され、販売は好調でした。
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