スバル「アルシオーネ」は、同社初のスペシャリティカーとして、1985年1月にデトロイトモーターショーで発表され、同年6月に国内で発売開始になりました。特徴は、まず空力特性を最大限に追求したボディにありました。リトラクタブルヘッドランプ採用により実現した低いノーズや各種エアロパーツを始め、ワイパーやドアミラー、ドアノブに至るまで空気抵抗低減に配慮されていました。
Cd値トップの空力ボディと、レオーネ譲りのメカニズム
その結果、Cd値は国産車トップの0.29を実現し、デザイン上も非常にモダンなイメージを与える事に成功していました。ボディ・サイズは、全長4,450mm×全幅1,690mm×全高1,295mm~1,335mmで、ライバルの「いすゞ・ピアッツァ」や「ホンダ・プレリュード」より若干大きいサイズでした。車両重量は1,050kg~1,180kgで、ボディサイズの割に軽量に抑えられていました。乗車定員は4名でした。
プラットフォームは、同社の主力セダン「レオーネ」の物を流用し、2,465mmのホイールベースも同一でした。サスペンションも、レオーネの前ストラット式/後セミトレーリングアーム式による4輪独立懸架が踏襲され、ブレーキは前ベンチレーテッドディスク/後ディスクの4輪ディスクブレーキが奢られました。
エンジンは、これもレオーネと共通の1.8L SOHC水平対向4気筒ターボのEA82型で、最高出力と最大トルクは120ps/18.2kgmでした。駆動方式は、FFと4WDが用意され、トランスミッションは、FFモデルは5速MTのみが用意され、4WDモデルは5速MTと3速トルコンATが選択可能でした。
スバル アルシオーネのCM
新車情報’87 スバル アルシオーネ
ATモデルには独自の4WD機構を採用、インテリアも個性的
4WDのATモデルには、大きな加減速Gが掛かった場合や、ワイパーを作動させ雨天と認識された場合に自動的にFFから4WDに切り替わる、独自のフルタイム4WDシステムが搭載されていました。一方、MTモデルは、レオーネ同様のパートタイム4WD方式でした。
又、インテリアも、エクステリア同様前衛的な雰囲気に溢れたものでした。独創的なデザインのダッシュボードにデジタルメーターが組み合わせられ、L型の左右非対称のステアリングが採用されるなど、スペシャリティカーとしてもユニークなものでした。一方、やや煩雑な印象も否めず、スイッチ類の操作性は必ずしも良好とは言えませんでした。
マイナーチェンジで2.7L追加、4WDシステムやサスペンションも進化
1986年3月に、FFモデルにも3速AT仕様が追加されました。次いで1987年7月にマイナーチェンジが実施され、市場競争力を高める目的で2.7Lモデルが追加されました。搭載されたエンジンは、アルシオーネ用に開発された水平対向6気筒NAのER27型で、最高出力と最大トルクは、EA82型を2割程上回る150ps/21.5kgmでした。車両重量は1.8Lモデルより100kg以上増加し、1,300kgになっていました。
トランスミッションは4速トルコンATが組み合わせられ、駆動方式は4WDのみでした。この4WDシステムは、「ACT-4」と称する電子制御アクティブトルクスプリット方式に進化しており、状況に応じて前後の駆動力配分を自動的に変化させる先進的な機構を備えていました。当時、スバルはフルタイム4WDシステムにおいてアウディの先行を許していましたが、この新システムにより凌駕する事となりました。
このACT-4は、1.8L 4WDのATモデルにも搭載され、同時に1.8L MTモデルもACT-4ではない従来型のフルタイム4WD方式に変更されました。又、2.7Lモデルと1.8L ATモデルは、サスペンションが従来のコイルスプリング式から、電子制御式の2段階ハイトコントロールを備えるエアサスペンションに変更されました。それと同時に、1.8LモデルのAT仕様もそれまでの3速ATに代わり4速AT化されました。
このように、意欲的な要素を数多く備えていたアルシオーネでしたが、主要なマーケットであった北米市場、国内市場とも発売当初を除いて販売は振るわず、1991年9月に生産終了となり、後継モデル「アルシオーネSVX」へとバトンタッチされました。