スズキの大衆車「フロンテ800」は、軽自動車で4輪車市場に参入していた同社初の普通乗用車として1963年の東京モーターショーに初出展され、2年後の1965年12月に販売が開始されました。当時西ドイツに存在していた自動車メーカーDKWの小型セダン「F11/F12」を下敷きに設計され、国産普通乗用車として初めてFF方式を採用した事が特徴でした。
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欧州車ムードのスタイリング
スタイリングは、直線基調のプレーンなボディラインとサイドまで廻りこんだリアウィンドウ、そして丸型4灯式のテールランプが特徴で、欧州車のような雰囲気を醸すものでした。ボディサイズは全長3,870mm×全幅1,480mm×全高1,360mm、ホイールベースは2,200mm、車両重量は730kgで、同クラスの競合車種であった「トヨタ・パブリカ」や「ダイハツ・コンパーノ」などより大きなボディを持っていました。
サスペンション形式は、フロントがウィッシュボーン/トーションバー式、リアがトレーリングアーム/トーションバー式による4輪独立懸架で、前述したライバル達よりも先進的なメカニズムを持っていました。又、ボルト調整により車高が変えられる点も特徴でした。そして、大半の国産普通乗用車がコンベンショナルなFR方式を採用する中で、スペース効率の点で有利なFF方式を採用した事も持ち味となりました。
スズキ フロンテ800デラックス(1969) ノスタルジック2デイズ2020
エンジンはバランスの良さが持ち味
エンジンは、既に普通車では4サイクルが主流になっていた中で、同社の技術の粋を集めた水冷2サイクル3気筒が採用されました。800ccの排気量から最高出力41ps/4,000rpm・最大トルク8.1kgm/3,000rpmのスペックと、理論上4サイクル6気筒に匹敵すると言われるバランスの良さを発揮しました。トランスミッションは4速コラム式MTが組み合わせられ、最高速度115km/hの性能でした。
室内は、丸型2眼式メーターを採用したスポーティーな雰囲気のインパネが備わったものの、発売当初のフロントシートはベンチシートでした。グレード体系は、「スタンダード」と「デラックス」がラインナップされました。そして翌1966年4月にフロントシートがセパレートシートに変更され、更に6月にリクライニングシート仕様が設定されました。
振るわなかった販売
次いで8月には早くもスタンダードが廃止され、デラックスに一本化されました。そして1967年3月に小規模な仕様変更が行われた後は、大きな変更もなく1969年4月まで生産が続けられました。軽自動車が主力であったスズキとしては、元々フロンテ800の大量生産を見込んでおらず、製造工程の大半がハイドメイドにより行われた為生産効率は芳しくありませんでした。
又、割高な価格設定や、白煙や燃費の悪さが敬遠されつつあった2サイクルエンジンを搭載していた事も相まって、販売面でも振るいませんでした。総生産台数は2,717台、総販売台数は2,612台で、実用車としては非常に少ない数字でした。