イタリアのデ・トマソ社によるスーパーカー「パンテーラ」は、フォードとの共同開発により、まず1970年にプロトタイプが発表され、翌1971年に市販モデルが発売されました。フォード側がコストダウンと大量生産を望んだ為、量産に適したモノコックフレームを採用し、エンジンは汎用型を流用するなど、同時代のライバルと比較して割り切った設計手法が特徴でした。
カロッツェリア・ギアのデザインによるスタイリングは、シャープさと曲線美を併せ持ったもので、GTカー風であった前作の「マングスタ」よりも、よりピュアスポーツカーらしい雰囲気を醸していました。ボディサイズは、全長4,270mm×全幅1,811mm×全高1,100mmで、車両重量はライバルよりやや重い1,420kgでした。サスペンションは、4輪ダブルウッシュボーン式でした。
フォードV8エンジンを搭載
駆動方式はMR方式で、フォード製5.8L V8 OHVエンジンが素の状態で搭載され、5速MTと組み合わせられました。初期型のスペックは、最高出力300ps/6,000rpm、最大トルク46kgm/4,000rpmで、エンジンがハイテクである反面排気量の小さい「フェラーリ・365GTB」や「ランボルギーニ・ミウラ」と比較すると、最高出力で劣り最大トルクでは勝るスペックでした。
汎用型のエンジンではあったものの、最高速度は280km/hに達し、性能面では前述のライバル達に遜色のないものでした。エンジンのフィーリングは、専用設計のV12エンジンを搭載するフェラーリやランボルギーニのような官能性には欠けていたものの、アメリカ車的な豪快で野太いフィーリングは、独自の個性ともなりました。
ハイパフォーマンス版の追加、マイナーチェンジで進化
翌1972年には、装備の充実を図ったグレード「パンテーラL」が、1973年には更なるパフォーマンスを追求したグレード「パンテーラGTS」が追加されました。GTSのスペックは、エンジンのチューニングにより、最高出力355ps/6,000rpm、最大トルク50.1kgm/6,000rpmまで向上していました。
1980年には、オーバーフェンダーやテールウイングの装着により、レーシーな雰囲気を演出した「パンテーラGT5」が追加されました。その後、1984年にマイナーチェンジを行い、「パンテーラGT5S」となりました。1990年には、エンジンが「フォード・マスタング」に搭載されていた4.9L V8 OHVに置き換えられ、最高出力305ps/5,800rpm、最大トルク46kg/3,700rpmのスペックとなりました。
そして、1991年に最終型となる「パンテーラSI」が登場しました。このモデルは、ガンディーニの手によりエクステリアのリデザインが施され、よりモダンで迫力あるイメージに変貌しました。ボディサイズは、全長4,350mm×全幅1,980mm×全高1,100mmとなり、従来型と比べると特に全幅が大幅に拡大されていました。このモデルは、少数が1994年まで販売されました。
価格の安さで成功作に
パンテーラは、エンジンのスペックは平凡であり、フェラーリやランボルギーニのようなカリスマ性には欠けていたものの、価格がそれらの半分程度と、スーパーカーとしては安価である事がメリットでした。時に「スーパーカーの廉価版」などと揶揄されながらも、20年以上に渡るロングセラーとなり、結果的に成功作となりました。