フェラーリは1984年10月のパリ・サロンで、「512BBi」に代わる新たなフラッグシップモデルとなる「テスタロッサ」を発表しました。パワートレインは基本的に512BBiのものが踏襲されたものの、ボディが一回り拡大されると共にスタイリングが大きく変貌しました。同時に重心位置の変化などに伴い、性格はそれまでのスーパースポーツからグランツーリスモに近いものとなりました。
よりシャープなスタイリングに
ボディタイプは512BBi同様フィクスドヘッド・クーペのみの設定で、デザインも同じくピニンファリーナにより手掛けられました。しかし、スタイリングはエッジの効いたシャープな造形が備わると共にボディ側面にスリットが入れられるなど、雰囲気は大きく変わりました。ボディサイズは全長4,485mm×全幅1,976mm×全高1,130mmで、512BBiから一回り拡大され、特に全幅は一気に146mmワイド化されました。
又、ホイールベースは150mm延長され2,550mmとなり、車両重量も僅かながら増加し1,506kgとなりました。従来通りミッドシップマウントされる4.9L 180度V12DOHCエンジンは、基本設計は同一ながらそれまでの2バルブ仕様から4バルブ仕様に変更されました。燃料供給装置は、従来通りボッシュKジェトロニック燃料噴射装置が採用されました。
エンジン性能が向上
9.3:1の圧縮比から発生するアウトプットは、欧州仕様で最高出力390ps/6,300rpm・最大トルク50kgm/4,500rpmとなり、512BBiの最高出力345ps/6,300rpm・最大トルク46kgm/4,200rpmから45ps/4kgmの向上を果たしました。このエンジンに組み合わせられる5速MTは、ファイナルレシオは512BBiと同一ながら1~5速の各ギアレシオが変更されました。
動力性能は、最高速度は512BBiから5km/h低下し275km/hとなった一方、0-60mph加速は0.4s短縮され5.2sとなりました。尚、厳しい排出ガス規制が適用される日本仕様と北米仕様はエンジンのスペックが異なり、最高出力380ps/5,750rpm・最大トルク48kgm/4,500rpmの性能となりました。同時に車両重量も増加し、日本仕様の場合で1,660kgとなっていました。
その他、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式や、ラック&ピニオン式のステアリング形式、4輪ベンチレーテッド式ディスクブレーキなどの基本的なメカニズムは512BBiから踏襲されました。又、タイヤサイズは512BBiが前後とも240/55VR4 15であったのに対し、フロントが225/50VR16、リアが255/50VR16という前後異形サイズが採用されました。
そして1987年にエンジンに改良が加えられ、ボッシュ製燃料噴射装置がそれまでのKジェトロニックからKEジェトロニックとなり、スペックに変更はなかったもののスロットルレスポンスが改善されました。そして1991年に後継モデルの「512TR」が登場した事に伴い、生産終了となりました。